シリアのアサド大統領はいま、トルコやアメリカの厳しい追い込みにあって、苦しんでいる。彼のシリアにおける大統領の地位は、明日は判らないという状態にあるのだ。
その彼が、今回のパリテロ事件に関して発言しているが、それなりの意味がある発言だ。彼はIS(SISL)が拡大していったのに、フランスは貢献していた、というのだ。
アサド大統領はフランスが、数日前に起こった、レバノンのベイルートでのテロにも、シリアで過去5年間続いた内戦にも、関連していると語った。ベイルートではISが、ツイン・タワーで行ったテロで、44人を殺害している。
アサド大統領は3年前から、ヨーロッパに危険が及ぶことを、警告してきたが、ヨーロッパ諸国政府は彼の発言を、無視してきたと語った。
アサド大統領はフランス国民が、いまこそホーランドとフランス政府の、テロに対する対応が正しかったかを、考えるべきだ言い、もちろん、答えはノーだと語っている。
また、『フランスはシリアの反体制派を支援してきていたが、最近ではIS(ISIL)に対して空爆を行っている。』と語った。
つまり、アサド大統領に言わせれば、西側諸国はシリアのアサド体制を打倒するために、反政府のテロリストを支援してきたが、途中でそのテロリストを敵視するようになり、空爆を行うようになった。その結果、IS(ISIL)はフランスと国民を、明確な敵として捉えるようになり、今回のテロ事件が起こった、ということを訴えたのであろう。
今回のテロ事件は実に悲惨なものであり、フランス国民に心から同情するが、アサド大統領が指摘するように、フランスやアメリカは、IS(ISIL)をこれまで直接間接支援してきていたわけであり、ここに来て、都合が悪くなったからといって、IS(ISIL)を攻撃し始めたのだ。
欧米諸国は自国の利益のために、悪人を捏造し、非難し、遂には攻撃を加えるということを、繰り返してきている。その時、必ず主張されるのは『国民に自由と民主主義を』『独裁者の蛮行を許すな』『民主的な体制創設に支援を送ろう』といったものだった。
確かにイラクのサダムフセイン大統領、リビアのカダフィ大佐は独裁者だったが、自国民をアメリカが殺害したほどは、殺してはいない。彼らが殺したのはせいぜい数千人だろう。アメリカが殺したのは百万人単位なのだ。その後、これらの国は、民主国家ではなく、戦場になっているのだ。