冷たい友好関係にあるといわれて久しい、イスラエルとエジプトの関係だが、イスラエルにとって一番不安なことは、エジプトの体制が反イスラエルに、変わることであろう。
述べるまでもなく、エジプトはアラブ諸国のなかにあって、最大の軍事力を有する国家だ。そのエジプトとイスラエルが、1973年に戦争をした第四次中東戦争では、エジプトはイスラエルと互角に、戦っているのだ。
いま、エジプトはアブドルファッターハ・シーシ将軍が、大統領に就任しているが、イスラエルは彼の身の安全を、危ぶんでいる。もし、シーシ大統領が殺害され、新しい大統領が登場した場合、彼が親イスラエルであるか否かは、予測できない。
たとえば、イスラム原理主義のムスリム同胞団が、権力を握れば、エルサレムの解放が第一目標となり、ガザのハマースとの連携が、強化されよう。また、世俗主義者ではあるが、独裁的な大統領が登場してきた場合は、その人物との平和な関係構築は、容易ではあるまい。
これまでに既に、シーシ大統領は何度かの暗殺未遂事件に、遭遇しているということだ。しかも、敵はシーシ大統領の出身母体である、軍部に潜んでいるのだ。
さる8月26日には、軍の将校がシーシ体制の打倒を画策したかどで、軍事法廷で有罪判決が、下されている。
なお、これまで確認されている、シーシ大統領暗殺未遂は、2度起こっているということだ。シーシ大統領は彼の身の安全を確保するために、毎晩何処で寝ているのかが、秘密になっているということであり、いかに厳しい環境にあるか分かろう。
シーシ大統領を狙うグループには、彼が打倒したムスリム同胞団ばかりではなく、他のイスラム原理主義組織や、IS(ISIL)も含まれるのだ。
これまでに数百人の警察や軍人が、エジプトでは殺害されており、見えない緊張状態に、エジプトは覆われていると言えよう。エジプト国民の間には、シーシ大統領の支持者も少なくないが、彼に敵対する輩も少なくないということだ。
問題はエジプトのシーシ大統領や警察、軍人だけではなく、在エジプトの外国人も、ターゲットにされる危険性がある、ということだ。最近、シナイ上空で墜落した、ロシア機の例などはまさにそれであろう。
エジプトの西の隣国リビアには、多数のIS(ISIL)メンバーが、既に入国しているし、エジプト領土のシナイ北部にも、多くの反シーシ体制の、イスラム原理主義者たちがいるのだ。
このような状態にあるため、いま、イスラエルとアメリカは、シーシ大統領の身の安全を、どうやって守っていくかということが、最重要課題の一つになっている、ということだ。