派手なパリでのテロを目の当たりにするとき、我々はIS(ISIL)がいまだに大きな力を、持っているように考えてしまう。確かにパリで129人を殺害したのだから、そのIS(ISIL)の力は侮れない。
だが、無防備の市民を殺すことは容易であろう。テロリストがいて、武器や爆発物さえあれば、それは出来ることであり、通常の戦闘とはわけが違うのだ。ただ、テロを起こした後では、現地の軍や警察に包囲されるわけだから、テロリストたちは逮捕あるいは、死を覚悟して実行しなければなるまい。その覚悟があれば、案外簡単なのではないか。
パリでの派手なテロ攻撃とは異なり、シリアやイラクではIS(ISIL)は相当追い込まれてきているようだ。ロシアの空爆は正確であり、猛爆撃を繰り返している。その成果が上がっているだけに、アメリカも放置できず、遂にIS(ISIL)攻撃に、本腰を入れ始めている。
IS(ISIL)の主要資金源といえる、石油密輸用のタンクローリーを、米露の空爆で数百台破壊したし、製油所施設も破壊することに成功している。加えて、ロシアはIS(ISIL)の軍事訓練所や武器庫、それにIS(ISIL)の指揮所や、事務所を破壊してもいる。
あまりにも空爆が激しいので、IS(ISIL)の幹部や戦闘員が、何人も死亡している。そのため、IS(ISIL)の幹部の家族が、彼らが首都と言っている、シリアのラッカ市から、イラクのモースルに逃げ出している。
しかし、そのイラクのモースル市も、イラク軍が攻撃を強化する方針であり、やがては、イラク軍によってIS(ISIL)の手から、解放され奪還されることになろう。そうなれば、IS(ISIL)は今度は何処へ逃れるのであろうか。リビアではIS(ISIL)は苦戦しているので、当分は家族を避難させる場所にはなるまい。
そうなると、アフガニスタンということが考えられるが、そこもそう安全な場所とはいえまい。アメリカ軍が撤退する予定だったが、ここに来て駐留が、延長されることが決まっている。もしアメリカが手を抜いてくれるのであれば、話は別だが、そうで無ければ相当の犠牲が、IS(ISIL)側に生まれることになろう。
これまでIS(ISIL)を支え、資金提供してくれていた、サウジアラビアやカタールも、次第に資金の提供を控えてきているし、クウエイトは民間の資金援助者を、取り締まることを決定している。
トルコもまた、これまでのように大量の武器を援助したり、戦闘員の自国領通過を、許すわけにはいかなくなってきている。資金の通過地点にも、なり難くなるだろう。IS(ISIL)は追い込まれている、ということではないのか。