トルコのダウトール首相が、シリア・イラクのIS(ISIL)に対する攻撃に、参戦する意向を明らかにした。これまで、トルコはIS(ISIL)攻撃を、何度となく口にしてきたが、実際にトルコ軍が攻撃するのは、空軍によるものに限られ、イラク北部の、カンデールなどを中心とする、PKK(クルド労働党)の拠点だった。
トルコはこれまで、IS(ISIL)をシリアのアサド体制打倒に、利用しようとして、大量の武器を供給するだけではなく、IS(ISIL)の戦闘員が自国を通過することも、認めてきていた。
今回のダウトール首相の発言は、それを大きく変えるものであり、注目に値する。なぜトルコはIS(ISIL)への攻撃を行う意向を、今の段階で明らかにしたのであろうか。
トルコに対し、アメリカやNATO 諸国は、IS(ISIL)との戦闘に参加するよう、何度も働きかけてきていた。しかし、トルコはなかなか重い腰を、上げようとしなかった。
トルコにとって、シリア問題への軍事介入の目的は、あくまでもアサド体制の、打倒にあったからだ。アメリカやNATOが、アサド体制の打倒に賛同しなければ、トルコはIS(ISIL)攻撃に、本腰で参加することはない、という立場だったのだ。
このことから考えると、今回のダウトール首相の発言は、アメリカやNATOがトルコに対して、アサド体制の打倒を認めるか、協力する意向を、明らかにしたからではないのか。
勿論、11月1日の選挙で、与党AKPが大勝利したことでトルコ政府の気持ちが大きくなり、なんでも希望通りになると考えての早とちりかもしれない。また、トルコは本音ではIS(ISIL)攻撃は、形だけに留め、もっぱらアサド体制の打倒に、軍事力を投入するのかもしれない。