すでに半年も過ぎたろうか、タジキスタンで著名な軍司令官が、彼の部下を伴って、シリアに移動し、IS(ISIL)の戦列に加わった、という情報が伝わっていた。彼は有能な人物であり、軍内部には彼の支持者が、多いとも伝えられていた。
その人物がここにきて、正式にタジキスタンの戦闘グループが、IS(ISIL)に加わることを、宣言したのだ。そのことが少なからぬショックを、中央アジア諸国とロシアに与えている。
タジキスタンは述べるまでもなく、中央アジアの一国であり、かつてソ連がアフガニスタンで、占領を続けている頃に起こった、アフガニスタン側の解放グループとの戦闘で、タジキスタンの首都ドシャンベは、ソ連軍の後方基地になっていた。
それだけに、タジキスタンには多くのソ連の遺産が、残されている。つまり、ソ連が残していった各種施設、生産工場、兵器製造工場と、兵器製造のノウハウなどだ。それらの兵器製造のノウハウのなかには、化学兵器や核兵器も、含まれているということだ。
したがって、タジキスタンがIS(ISIL)に参加した、イスラム原理主義戦闘グループによって、支配されるようなことになれば、中央アジア諸国は極めて危険な、状態に陥るということだ。もちろん、それはロシアにとっても危険の、前触れであろう。
このタジキスタン・グループは、既にロシアで働くタジキスタン人たちに対して『ロシアで働く者はクッファール(無神者)の奴隷となっている。』と警告し、ロシアに対して立ち上がれと呼びかけてもいる。しかも武器は十分にあるとも、このメッセージのなかで、付け加えている。
シリアでは現在、約4000人のタジキスタン人戦闘員が、戦列に加わっており、ロシアに出稼ぎに行っているタジキスタン人を、リクルートすることもできる状態に、なっているということのようだ。それはロシアにとって、将来への大きな危険の、前ぶれであろう。
これは中央アジア諸国を、混乱に陥れるための動きであろう、と中央アジア各国は受け止めている。なかでも、国内にイスラム原理主義反政府勢力を抱えている、ウズベキスタンでは大統領が、厳重な警戒態勢に入ることを、指示した。
この場合も他の地域同様に、アメリカとロシアの覇権争いの、要素を無視することは出来まい。アメリカは中央アジアにも、手を出し始めたということだ。それはこの地域が、エネルギーの大産出地だからであろう。