トルコの現状は内憂外患であろう。シリアの難民問題でヨーロッパ諸国はシリアの難民を、トルコに閉じ込め難民の流入を阻止したい、と思っている。メルケル首相が突然、トルコを訪問した理由は、述べるまでも無くトルコに、シリア難民問題を押し付けるためだ。
もうひとつの問題は、トルコの11月1日に予定されている、選挙の行く方だ。最近の世論調査では、与党AKPが過半数を取ることは、ほぼ不可能だという結果が出ており、前回6月の選挙時よりも、支持を減らしている。
そうなると、AKPが単独政権を樹立することは出来ず、野党との連立内閣結成、ということになる。しかしCHP,MHP,HDPの野党3党は、AKPとの連立内閣に、参画しないと言っており、連立内閣は結成されないことになる。
こうしたなかで、エルドアン大統領は現在の臨時内閣で、来年8月まで継続できるが、それは時間の無駄であり、なんとしても選挙を実施し、連立内閣を組閣したい、と考えている。だか、同時にエルドアン大統領は、選挙が無いこともありうる、と語っている。
エルドアン大統領の本音は、選挙を実施しないで、このまま押し切ることではないのか。もし連立内閣が結成されることになれば、野党側は財務、法務、情報、国防といった、重要な閣僚ポストを渡せ、とAKPに要求しよう。そうなれば、エルドアン大統領と彼の家族、そして仲間が法の下に引き出される、危険性があろう。
そこで、選挙を回避する方法は、二つ考えられる。もう一度アンカラ・テロのような、大規模なテロ事件を起こし、非常事態宣言を出すことだ。それはまさに劇薬であろう。
そしてもうひとつは、シリアに介入したロシア軍との間で、軍事的な緊張状態を創り出し、やはりトルコはいま危険な状態にあるのだから、選挙をしている暇は無い、とする方法だ。
もちろん、トルコはロシアと戦争をする気は無いのだが、ぎりぎりのところまで緊張状態を創り出し、欧米の介入によって武力衝突を避ける、という手法だ。これくらいの危険な手法は、エルドアン大統領なら採りかねまい。
たまらないのはトルコ国民であり、それらのいずれを採用しても、トルコに明るい将来は、見えてこない。