ブルガリアのボイコ・ボリソフ首相が、トルコを訪問した折に,トルコのダウトール首相は先月末に、首都アンカラで起こった爆弾・テロ事件について、言及している。
しかし、ダウトール首相が語った内容は、どう考えてもつじつまが、合わない気がするのだが、ダウトール首相は爆弾テロに関与したのは、PKK(クルド労働党)とIS(ISIL)だというのだ。
今回のアンカラの爆弾テロ事件で、犠牲になった大半は、クルド人であったことを考えた場合、なぜ同じクルド人の組織であるPKK(クルド労働党)が、彼らを狙うのか、という単純な疑問がわいてくる。
しかし、ダウトール首相はPKK(クルド労働党)が、重要な役割を果たした、というのだ。そうした考えに、ダウトール首相がたどりついたのは、次々と起こる難問を前に、彼の頭の中が整理できなくなった、からではないのか。
あるいは、11月1日の予定されている選挙で、クルドのイメージを悪化させ、クルドの政党であるHDPの、選挙での躍進を、止めようということなのであろうか。
ダウトール首相は同じ頃に、『6月7日選挙で与党AKPが敗北したとき、党内は大きなショックに包まれていた。』とも語っている。そのAKPの敗北の主たる原因は、クルドの政党HDPの大躍進だったのだ。
アンカラで起こったテロ事件は、IS(ISIL)によるものであったろうし、それをトルコ政府はある程度か、あるいは全てを知っていたのではないか、と思われる
それほどトルコ政府と、IS(ISIL)のとの関係は深いのだ。そのために、多くのトルコ人は今回のテロについて、政府がIS(ISIL)を使って、実行したものであろう、という見方をしているのだ。
そうしたなかで容疑者の数を増やし、国民の視線を変えてごまかそうということであるのなら、トルコ政府の罪は重かろう。(今回のアンカラ・テロの犠牲者数は、いまのところ97人とされているが、実際の死者は125人を超えており、政府は徐々に死者の数を発表して、国民の怒りをコントロールしようと思っているのだ、という説がある。)
ダウトール首相とはもう、20年も前にご縁があって、何度かお会いしているが、彼は物静かな学究肌の人であった。しかし、そのような人でも、政治という魔界に首を突っ込むと、その魔界の色に染まって、しまうのかもしれない。そこでは、裏切りや、嘘、陰謀は日常のことなのであろう。