『アンカラのテロ犯は誰か』

2015年10月12日

 

 当然のこととして、アンカラで起こったテロ事件について、トルコ国民の怒りが爆発している。アンカラやイスタンブールなどでは、大規模な政府に対する、抗議デモが起こっている。

 これらのデモ隊の怒りは、トルコ政府が治安を、維持できなかったことに対するものであり、政府の対応の無さに対するものだ。政府はISが真犯人であろう、と言っているが、その政府はISに対して、何も行動を起こしていない、という怒りであろう。

 トルコ政府がIS(ISIL)が、真犯人であろうとしているのは、今回のテロが、以前にトルコの南東部の街、スルチュで起こったテロに、似通っているからだ。犯行の手口が実によく似ている、というのが政府の主張だ。

 確かに、IS(ISIL)とクルドとの関係は劣悪であり、IS(ISIL)が今回のような、クルド人の平和的デモに対して、テロ攻撃を仕掛けることはありえよう。

 だが、それではトルコ政府は、全く関係ないと言えるのだろうか。これまで何度も書いてきたように、トルコンの情報部MITは、IS(ISIL)を後ろから支えてきた組織であり、トルコ政府はIS(ISIL)を、クルド対策に利用してきているのだ。

 そうであるとすれば、今回のテロについて、トルコ政府は事前に、知っていた可能性は否定できまい。それを放置したといわれても、根拠の無い話だとして逃げ切ることは、難しいかも知れない。

 アンカラ爆弾テロに対する抗議集会では、『エルドアンは殺人者だ!!』というシュプレヒコールや、『政府は解散しろ!!』そして『政府は責任を取れ!!』といったものが多いようだ。

 IS(ISIL)がテロの実行犯だとする説明は、分かりやすいのだが、それではそれが本当なのか、という疑問が沸いてこよう。これまで、トルコ国内で起こった、警官殺害テロなどでは、トルコの情報部MITによる犯行だったということが、何度と無く言われてきているのだ。

 トルコ政府は国民の間で、相当信頼を失ったのではないか。それが111日の選挙で、どのような結果を生み出すのか。政府はアンカラでテロが起こった後、選挙を実施すると言っている。

 今回のテロ事件で多数の犠牲者を出した、クルドのHDP党首のデミルタシュは、選挙でけりをつけようと語っている。CHPのクルクチュダウール党首は、テロ事件後に笑った法相と内務相は、辞任すべきだと抗議している。

今回のテロ事件で、AKPに対する評価は、大分下がったのではないか。