『ロシアの本気に押され欧米シリア対応に変化』

2015年9月25日

 

 このところ、これまでとは全く違うシリアに対する対応が、欧米の間に見え始めており。それは、シリアのアサド大統領の、去就をめぐる問題だ。これまでは、欧米はいずれの国も、アサド体制は打倒されるべきだとか、アサド大統領は去るべきだ、という意見が主流だった。

 ところが、ここにきて出てきたのは、アサド大統領にもシリア問題の解決で、しかるべき役割を担わせるべきだ、という考え方だ。これまで、アサド体制を打倒するべきだ、と最も強調していたトルコのエルドアン大統領が、アサド大統領もシリア問題解決の協議に、参加させるべきだと言い始めたのだ。

 ドイツのメルケル首相もやはり、エルドアン大統領と同じように、協議参加を認めるべきだ、という意見を述べ始めている。彼女はシリアの問題を解決するための、いずれの会議にもアサド大統領を、出席させるべきだ、と言い出しているのだ。 

 ロシアのプーチン大統領と、アメリカのオバマ大統領との話し合いでも、アサド大統領の問題解決に向けた会議への、参加が話し合われることになっている。もちろん、プーチン大統領はアサド大統領が、しかるべき役割を担うことを、強調している。

 こうした変化はなぜ出てきたのであろうか。単純に考えて、アメリカにもヨーロッパにも、シリア問題を解決すべきアイデアが、無いということであろう。そして、百万を超えるシリアの難民が、ヨーロッパに流れ込んでいる状況を前に、ヨーロッパ諸国には打つ手が、無くなったのであろう。

 アメリカも10万人単位のシリア難民の、受け入れを発表しているが、欧米のいずれの国にとっても、相当な負担となることは確実だ。そのことに加え、難民に対する対応が、不十分である場合には、難民が過激なイスラム思想に、引き込まれて行く、危険性もあろう。

 そうした事情に加え、ロシアはシリア対応で、欧米に対して、一歩も譲っていないということがある。最近では、シリア国内に二つの空軍基地を、建設し始めているし、東地中海での海軍の訓練も実施されている。

 シリア問題の複雑さと、ロシアのプーチン大統領の強引な対応が、欧米に妥協をさせた、ということであろう。これは世界的に見て、ロシアのプーチン大統領以外に、世界をリードできる人物がいない、ということの証明に、なるのではないか。オバマ大統領の存在感は、ほとんど感じられないのが、昨今の状況だ。