シリアの難民が戦火を逃れ、トルコやヨルダン、レバノンといった隣国に、流れていたのは大分前の話だ。もちろん、それは今でも続いているのだが、それも限界点に達し、遂に現地住民との間で暴力事件が起こり、政府の支援もままならなくなっている。
そして遂に、シリア難民は近隣諸国ではなく、ヨーロッパに向かうようになり始めた。トルコからブルガリアや、ハンガリーを経由して行く者、地中海をボートで渡り、ヨーロッパへ向かう難民の数が、何十万のレベルに達しているのだ。
そのボート難民が船の沈没で、多数犠牲になっている。先日は幼い子供が溺死し、波打ち際に横たわっている写真が、世界中に流さ同情を集めた。
地中海からギリシャに渡り、そこからヨーロッパの国々に向かうわけだが、第一希望はドイツのようだ。それはドイツの経済がヨーロッパの中で、最も強いからであろうし、ドイツにはトルコ人を始め、多くのムスリムが、居住しているからであろう。
そして、ドイツンには既に、45万人のシリア難民が、押しかけている。シリア難民ばかりではなく、ドイツにはこれ以外に、アフリカからの難民も入って来ているのだ。
ドイツのメルケル首相は、これらの多数の難民を、一国だけでは受け入れきらず、ヨーロッパ各国で分割して受け入れよう、と言い出している。しかし、経済状態が良くないヨーロッパ各国では、国の負担がかさむ難民支援に、国民は反発している。
難民が増えるということは、政府の難民支援負担が増し、職場が奪われ、住宅費が値上がりするようになるのは、トルコやヨルダンが既に経験済みだ。もちろん食糧など、あらゆる消費物資の値段も、値上がりする。
こうしたことから、ヨーロッパの一部の国や右派の政党が、難民問題は戦争と同じだ、と主張し始め、難民受け入れに強く反対してもいる。それを喜んでいるのはIS(ISIL)で、彼らに言わせれば、シリア難民が多数ヨーロッパに流れ込むのは、ヨーロッパを窮地に立たせることであり、喜ぶべきことであり、IS(ISIL)の勝利だとうそぶいている。
このヨーロッパ各国の状況を、アメリカも放置するわけには行かず、オバマ大統領は75000人程度の、シリア難民の受け入れを発表したが、当座は10000万人程度の受け入れ、ということになりそうだ。イギリスも万人単位で受け入れざるを得ない、ということになっており、それを公表している。
さて、中東から大分離れている日本に、シリア難民の影響はないのだろうか。日本に向かってくるシリア難民の数は、限られているだろうが、欧米に渡ったシリア難民に、救済の手を差し延べろ、という注文は付くだろう。つまり、資金援助の要請があるということだ。シリア難民問題は日本にとっても、他人事ではないのだ。