トルコで最近軍人の犠牲者数が激増している。それはPKKとトルコ軍が真正面から軍事衝突を、繰り返すようになったからだ。
トルコ軍はイラクのPKK(クルド労働党)の基地に対し、再三にわたって空爆を繰り返しており、相当の被害がPKK側に出ているものと思われる。
それに対抗し、PKK側はトルコ領土内で反撃に出ており、道路際の爆弾による攻撃や、銃撃戦を繰り返している。
過去3日間で、トルコ軍兵士が31人も犠牲になったことから、トルコ国内では、クルド人に対する憎しみの炎が、燃え上がっている。トルコ国内の各地のクルド政党HDPの事務所が襲撃され、本部ビルも被害にあっている。
こうしたことから、トルコの民族派は軍がクーデターを起こし、治安を強化してほしいと言い出している。そうでなくとも、エルドアン大統領の横暴なやり方に、腹を立てている国民も多く、最近では軍が立ち上がってくれることを、民族派に限らず期待視する声が少なくない。
このままでは、トルコ国内がイラクやシリアと同じような混乱に見舞われる、と懸念しても無理はなかろう。これまではクーデターが起こるのは、民主国家として恥ずかしいという感情や、EU入りが遠のくという考えがあり、軍にはクーデターを起こしてほしくない、と考える国民が多かった。
今、軍にクーデターを起こしてほしい、と叫び始めているのは、トルコの民族運動という組織であり、トルコ南東部では外出禁止令が出されている。これに対し、クルドの政党HDPのデミルタシュ党首は、状況が悪化した場合は敢然と立ちあがる、と宣言している。
問題は、トルコ軍によるクーデターが起こった場合、それがトルコ軍の、意志によるものなのか否か、という点だ。トルコ国内の混乱を前に、エルドアン大統領が軍にクーデターをそそのかす、ということはありえよう。
そのシナリオであれば、クーデターが起こっても、エルドアン体制は継続することになるし、軍と手を組んだ、エルドアン大統領の強権政治は、より一層強化されることになろう。
トルコ南東部の緊張を緩和させようと、ダウトール首相は危険を顧みずに、南東部を訪問したりしているが、実権は彼の手にはない。何とか現状を変えたいものだ。つい最近も、トルコから客が来て語るには、経済状態は悪化の一途をたどっているし、外資もトルコから逃げ出している、ということだった。そして彼が言うには『エルドアンが去ってくれれば、すべては解決するのだが。』ということだった