現在のトルコ国内外状況は、戦争といっても過言ではないほど、危険度が増している。国外ではトルコ軍の空爆が拡大し、地上軍も派兵している。加えて、国内では各地で、PKKやクルド人と政府との、テロ戦争が続いている。
このような最悪の状態に、トルコを引きずり込んだのは誰なのか、ということをめぐり、当然トルコ国内では、激論が交わされている。マスコミは総じて政府を非難しているが、政府はマスコミに対し、弾圧という手法で応えている。
政府系の暴徒が、クルドの政党である、HDPの事務所を襲撃しているが、それは全国規模に拡大している。トルコのマスコミには毎日のように、HDPの襲撃された事務所の写真が、掲載されている。
国内ではPKK(クルド労働党)の戦闘員による、爆弾テロや銃撃が起こり、長距離トラックが襲撃され、政府の地方事務所が、襲撃されている。まさに無差別といった感じがするほどで、こうしたテロは首都のアンカラ市内でも、イスタンブール市内でも、起こっているのだ。
これら一連のPKKを中心にした、クルド人によるテロが起こるようになったのは、マスコミや野党に言わせると、エルドアン大統領に責任がある、ということだ。それは、彼が選挙を有利に戦うために、クルド人を巻き込むことを考え、PKKのアブドッラー・オジャラン議長との間で、クルド問題の平和的解決の、秘密交渉を始めたからだ。
その秘密交渉では、クルド人に対して自治区を与え、共存するということのようだった。しかし、PKK側はあくまでも戦闘の継続が、自治から独立への道だとして、この和平会議中に、トルコの検閲が甘くなったことを利用し、相当量の武器を、隠匿したようだ。
そして、6月7日に行われた選挙では、HDPというクルドの政党が大躍進し、し、その分、与党AKPの議席数が減ってしまい、AKPは過半数の確保ができなくなった。
このことに激怒したエルドアン大統領は、強硬な手段でクルドやPKKをつぶす方向に走りだした。そのためには、IS(ISIL)を使うことも考え、IS(ISIL)に、大量の武器を渡してもいる。
そして、NATOやアメリカがIS(ISIL)との戦いで、トルコが戦闘に参加するよう要請すると、エルドアン大統領はクルド対策と抱き合わせ、ということを主張し、クルドへの攻撃の正当性を勝ち取った。
以来、イラクのPKK基地に対する空爆が拡大し、陸軍も送り始めたために、トルコではクルド問題の、平和的な解決の道が閉ざされ、戦闘状態に陥ったのだ。