トルコのエルドアン大統領が、シリアのクルド掃討のために、軍事作戦を展開し始めた。表向きの理由は、NATOやアメリカと協力して、IS(ISIL)とクルドのテロ組織PKK 『クルド労働党』を掃討する、ということになっている
空爆がほとんどで、陸軍は動かしていないため、トルコ側の兵員の被害はあまり出ていない。テロによる一般人の被害は散見されるが、それほどの規模ではないようだ。
このエルドアン大統領の、悪魔の選択というべきか、はたまた賢明な選択と言うべきかの結果は、エルドアン大統領と与党AKPにとっては、非常にいい成果を、いままでのところ挙げているようだ。
エルドアン大統領による、戦争という劇薬の投与により、トルコ国内では国民が一丸となって、この状況に対応しようという雰囲気が、盛り上がっている。
その結果は次のよう状況を、トルコ社会に生み出している。
:連立内閣交渉は実質的に取り止め。
:早期選挙の実施の可能性拡大。
:与党AKPの選挙勝利の可能性拡大。
:単独政権誕生の可能性の拡大。
:エルドアンの大統領制国家への移行可能性拡大。
:汚職問題は影を薄めて国民の関心外になった。
:クルド議員の議員権剥奪が真面目に話し合われ始めた。
しかし、それらの与党AKPにとって、都合のいい変化だけではなく、トルコの近い将来への懸念も、多数出てきている。
:トルコリラの下落。
:輸出の伸び悩み。
:外国資本のトルコからの逃避。
:観光客の減少。
:国内テロの増加と社会的不安定化の拡大。
:クルドとの共存は困難になってきた。
:独裁体制への移行の可能性の拡大。
:ヨーロッパ諸国のトルコへの嫌悪拡大。
:アラブ諸国のトルコ警戒心拡大。
エルドアン大統領の今回の戦争決断は、一見、好結果を生んでいるように見えるだろうが、トルコの体力を大幅に削ぐことは間違いなかろう。結果的に、それはトルコ国民の犠牲の上に、構築されたものであり、将来、何倍にもなって帰ってこよう。