アラブ湾岸諸国の中でも、最も豊かで安定している、と思われていたアラブ首長国連邦で、多数のタクフィール(イスラム原理主義者)が逮捕され、裁判にかけられることになった。これには、それ以前の動きもあるだけに、根が深そうだ。
アラブ首長国連邦政府は41人のタクフィール・メンバーを、裁判にかけることを発表した。彼らはアラブ首長国連邦の体制を打倒し、カリフ制にすることを、画策していたということだ。このタクフィール組織には、アラブ首長国連邦の国民に加え、外国人がメンバーとして加わっている。
アラブ首長国連邦のタクフィール組織は、銃器や爆発物を、所持していただけではなく、外国の戦闘グループ(IS)とも、連絡を取っていた模様だ。
アラブ首長国連邦では2013年7月にも、68人が同様のイスラム原理主義関連で、逮捕され投獄されているが、彼らに対する裁判は、いまだに行われていない。また、アラブ首長国連邦ではムスリム同胞団の活動も発覚し、先年1月には、30人のメンバーが逮捕されている。
こうしたことが政府によって、公然と報じられるようになったのは、相当活動が拡大し、かつ活発化しているからではないのか。自国民人口の少ないアラブ首長国連邦では、たちまちにしてその影響が、出てくる危険性があろう。
同じアラブ湾岸のクウエイトでも、IS(ISIL)のメンバー5人が、7月末に逮捕されている。それ以前にも、クウエイトではIS(ISIL)がらみの人物が、複数逮捕されていることを見ると、やはりアラブ首長国連邦同様に、根は深いのではないかと思われる。
アラブ湾岸のバハレーンでは、シーア派国民による反政府デモが、2011年の段階から続いている。その反政府シーア派グループ幹部の逮捕と、投獄は国際的な関心も、呼ぶに至っている。つまり、バハレーン政府に対する批判も、生まれてきているということだ。
さて、そうしたアラブ湾岸諸国の状況を考えてみると、サウジアラビアの国内情勢も油断できないのではないか。述べるまでもなく、サウジアラビアのペルシャ湾岸のアルカテーフ地区では、シーア派による反政府デモが繰り返されているし、最近では治安警察や軍隊に対する、テロ事件も起こっている。
サウジアラビアは当然、彼らシーア派グループの背後には、イランが控えていると認識している。あわせて、イエメンのホウシ・グループに対するイランの支援も、サウジアラビアの頭痛の種であろう。
世界の一大産油地域であるアラブ湾岸諸国は、いま押しなべて、危険の淵に立たされつつある、と受け止めておくべきであろう。