『連立内閣結成の問題点はエルドアン』

2015年7月14日

 

 今週の月曜日から、トルコではダウトール首相が、連立内閣の結成努力を始めた。もちろん、現実的であるか否かは別にして、すべての主要野党との間で、連立問題は話し合われることになる。

 昨日は、CHP との間で交渉が行われたが、AKPCHPの雰囲気は、すこぶるいいものであった、と報じられている。その通りであろう。ダウトール首相の心の中にあるものと、CHPのクルチュダウール党首の心の中にあるものは、ほぼ同じだからだ。

 両者は、いかにしてエルドアン大統領の、独裁を阻止するか、にあると言えよう。たとえCHPAKPとの連立を組んで、内閣に入ったとしても、これまでと同じように、エルドアン大統領がしゃしゃり出てくるのでは、CHPの閣内参加の意味が、消えてしまうからだ。

 やはりそのことは、私が考えていただけではなかった、クルチュダウールCHP 党首とダウトール首相との、話し合いのなかでも、この問題は出てきている。つまり、内閣の会議に、AKPの単独政権の時と同じように、エルドアン大統領が介入し、会議を牛耳るのかという問題だ。

 この点について、ダウトール首相は明言を避けながらも、エルドアン大統領の参加を阻止することは、出来ないと語っている。それはエルドアン大統領が内閣を解散するか維持するかの、最高権限を握っているからだ、ということのようだ。

 この問題が解決されない限り、連立交渉を成功させることは、他の党との間でも、難しくなるのではないか。

 しかし、だからといって連立交渉を、野党各党は放置することもできまい。もし、エルドアン大統領が望むように、連立交渉が失敗して、選挙のやり直しとなれば、与党は確実に現在の259議席から、280議席程度まで増える、と予想されているからだ。

 それはHDPCHP 、そしてMHPの議員が、落選するということを、意味しているのだ。最近行われた世論調査の結果では、次の選挙では野党に投票しない、と答えた者が5パーセント増えている、ということだ。

 エルドアン大統領は次の選挙で大勝利し、実権を持つ大統領(独裁者)になることを、考えていよう。今回行われている野党との連立交渉は、エルドアン大統領にしてみれば、選挙への免罪符なのかもしれない。

 ダウトール首相と野党は、懸命な交渉をし、エルドアン大統領の野望を打ち破れるのか否か、まさに、度胸と実力、そして二人の英知が問われている、ということであろう。

 もし、ダウトール首相がこの連立内閣の、樹立に失敗すれば、彼は確実に首相の座から追放されよう。そのレベルまでエルドアン大統領とダウト-ル首相との、信頼関係は崩壊しているのだ。

 そして、首相の座から引きずり降ろされた後の、ダウトール首相を待ち受けているものは、汚職容疑であり、その他、想像もできないような、数々の犯罪の嫌疑であろう。エルドアン大統領とは、そのような人物なのだ。

そのことを一番知っているのは、ダウトール首相自身であろう。したがって、ダウトール首相は出来る限り、連立内閣の成立に、死に物狂いの努力を、するのではないか。