先に行われたトルコの国会議長選挙では、エルドアン大統領が希望していた、ナビ・アウジュ教育大臣ではなく、ダウトール首相が推薦した、ユルマズ氏が当選した。それ以前から、エルドアン大統領とダウトール首相との仲は、険悪だといわれてきたが,今回のトルコの国会議長選挙をめぐり、その対立の度合いはますます、濃くなったようだ。
そもそも、エルドアン大統領は彼こそが、トルコのすべての権力を、掌中に収めてしかるべきだ、と考えてきている。このため、国家の最高権威である大統領に、就任することを希望し、その通りになったのだ。
しかし、その後もダウトール首相を差し置いて、内閣会議を主催している。しかも、それは一度だけではなく、複数回行われたのだ。これではダウトール首相としては、メンツ丸つぶれであったろう。
もちろん、このことについては、与野党双方から、エルドアン大統領に対する、批判が出ていた。そもそも、大統領職はシンボルであり、直接的に行政に首を突っ込まない、というのがルールなのだから。
さて、エルドアン大統領は最近、ダウトール嫌いが強くなり、なんとか彼を首相の座から外して、新首相を据え付けて、選挙に打って出たいと思っている。今の状況でいけば、国家の財源を握っている与党AKPが、再度の選挙で勝つことは必定であろう。野党側にはそんな資金はないのだから。
そうなると、ダウトール首相は何としても、早期に野党との連合政府を、組織しなければならない、ということになる。それに失敗すれば、エルドアン大統領によって、首相職を追放されるだけなのだ。
そこでいま話題になっているのは、野党MHPとの連立内閣結成の話だ。国会議長選挙を前に、ダウトール首相はMHPと協議し、ユルマズ氏の当選に成功している.つまり、MHPはダウトール首相を、支持しているということだ。
確かに、MHPはエルドアン大統領に対し、連立を組む条件はすべての汚職容疑者を、公正に裁くことが条件だ、と言ってきている。エルドアン大統領にはそれは飲めないが、ダウトール首相なら受け入れる、可能性があるのだ
いまトルコ国内では、エルドアン大統領とダウトール首相の、死闘が繰り広げられているということだ。もし、この死闘でダウトール首相が勝利すれば、エルドアン大統領は断頭台の露と、消えるかもしれない。