6月7日に行われた選挙後、野党の大連合内閣が、誕生することが期待された。しかし、いまだにそれは実現していない。そうした状況を見て、ダウトール首相は『AKP抜きの連立内閣は成立しえない。』と語っている。
確かにそうかもしれない。それは愛国党のMHPが、クルドの政党HDPに敵意を抱いているからだ。またMHP と最大野党のCHPとの関係も、対立であり友好的ではない。そのため、MHPがAKPと連立を組むのではないか、といわれているが、それも困難だろう。
それは、MHPが連立を組むにあたっては、汚職問題を明らかにして裁判にかけろ、とAKPに要求しているからだ。それは与党AKP、なかでもエルドン大統領には、出来ないことであろう、本人も彼の家族も、重要な容疑者なのだから。
結果的に、今のトルコは片肺飛行のような状態に、あるということだ。辛うじて国会議長のポストは、AKPが抑えたがそれとて、本意ではなかったのではないか。
こうなると内閣もしかりで、十分にその力を発揮することは出来ない。エルドアン大統領の命令に対しても、各方面で反発が生まれてきている。その結果、今までは不可能だったことが、トルコで可能になってきているということだ。
ジャーナリストは平気で、エルドアン大統領のスキャンダルを非難し、警察や検察でも、更迭された人たちだけではなく、批判を始めている。そうした傾向が顕著になってきたのには、もうエルドアン体制が長持ちしないだろう、という判断が広まっているからではないか。
国会議員数の半分を割ったAKPには、何事につけ強硬に推し進めることが、出来なくなってきているのだ。議員の構成を簡単に言えば、6割が野党議員であり、AKPは4割でしかないのだ。
こうした社会状況のなかで、元警察汚職捜査チームのトップであった、サイウル氏が暴露ともいえる発言をした。彼はすべてをばらせば、殺されるだろうと語りながらも、汚職捜査のファイルが、エルドアン側によって全部廃棄される、危険性があることに、警告を発しているそのファイルは25個あり、全部で1005ページのボリュームだということだ。それに加え、数百ギガバイトのデータがあるというのだ。彼はそれらがAKPによって、償却処分される、と警告しているのだ。
こうした発言が出てくるということは、実は彼が処刑されることはない、ということではないのか。最近では裁判所も警察や検察に対する処分に、問題があることを明確に、発言し始めているのだ。つまり、トルコ社会は国会の議員構成比の逆転以来、確実に変化を始めているということだ。
そうした状況を打破できるのは、再選挙によってAKPが議会の過半数をとるか、シリアに軍事侵攻を始めることにより、非常事態宣言をするか、のいずれかであろう。ただしトルコ国民はエルドアン大統領の、荒療治を歓迎せず、拒否するのではないか。