トルコのエルドアン大統領は、戦争を決断したのであろうか。トルコ軍の半分を、シリアとの国境地帯に展開し、ほぼシリアとの国境地帯全部に、展開させている。
これはシリアのクルドのミリシアや、IS(ISIL)に対する警告だ、という憶測もあるが、エルドアン大統領はシリアの領土内に、安全地帯を確保したい、と考えていることから、シリア領土への軍事侵攻は、十分起こりうることだ、と捉えておくべきであろう。
このトルコのエルドアン大統領が考える安全地帯は、幅が国境にそった110キロで、シリア領土内の深さが、30キロもの長大なものだ。もし、この安全地帯を構築した場合、トルコ軍は長期にわたって、駐留しなければなるまい。
それだけに、今回エルドアン大統領が考えている軍事作戦は、相当困難なものであるため、エルドアン大統領は元国防大臣のワジュウデイ・ジョナール氏を登用した。彼は国防大臣としては、2002年から2011年まで勤めた、ベテランなのだ。
ベテランの元国防大臣を起用したのはいいのだが、何処かこの作戦には、無理があるような気がする。エルドアン大統領は国連や欧米と、打ち合わせをした上で今回の作戦を、始めるわけでは無かろうから、止め役がいないということだ。
もう一点は、110キロの国境地帯全域で、軍を展開するということと、始めからトルコ軍の半分を、投入するということだ。これは思い切った作戦のように思えるのだが、あまりにも戦線が広がりすぎて、トルコ軍は持てる力を、十分発揮することが、出来ないのではないか。
述べるまでも無く、トルコの野党は押しなべて、今回のシリアへの軍の侵攻に、反対している。そして、ほとんどの野党は、エルドアン大統領一流の、脅し戦略と見ている。クルドのミリシアや、IS(ISIL)に対して脅しをかけ、トルコには、手を出させないということを、狙っているのだというのだ。
しかし、それは野党の平和主義者たちの発想であり、期待であり、願望でしかないのではないのか。エルドアン大統領は安全地帯構築という名目で、オスマン帝国時代の領土奪還を、考えているのだから。多分、アメリカは背後で、エルドアン大統領の軍事侵攻に、グリーン・ライトを点滅させるのではないか。