最近になって、ヨーロッパ各国ではイスラム教徒に対して、自国民がどう感じているのかといったことに関する、調査研究が進んでいるようだ。それは述べるまでもなく、自国に居住するイスラム教徒と、自国民との対立が激化することを、懸念してのことだ。
イギリスが行った調査によれば、10歳から14歳の若者の間では、3分の1が『ムスリムがやがては自国を支配する。』という強迫感に、苛まれているということのようだ。また、60パーセントの若者たちは、ムスリムが自分たちの仕事を奪っている、と感じているという結果が、出ているということだ。
現在、ヨーロッパ諸国に居住する、ムスリム人口は4300万人で、全人口の約6パーセントに、当たるということだ。そして、2050年までにはヨーロッパの、全人口の10パーセントに達する、と見込まれている。
これらのヨーロッパ在住の、ムスリムに対しては、サウジアラビアが資金を提供し、イスラム学校を多数開校しているが、そこでは述べるまでもなく、サウジアラビアの宗派である、ワハビー派に則った、教育が行われているということだ。
問題はこのサウジアラビアのワハビー派の考えと、IS(ISIL)の考えが極めて近いことだ。したがって、サウジアラビアが開校している、イスラム学校で学んだ者は、IS(ISIL)の影響を受け、強硬なイスラム原理主義者になり、遂には、テロリストになる危険性が、高いということになるのだ。
アフリカの西北端に位置するモーリタニアは、元来は穏健なマリキー派の、イスラム教徒の国だったが、最近ではワハビー派に、転向する者が増えている。それは、ヨーロッパのムスリムの間でも、同様の傾向を示しているのだ。
こうした流れに加え、イスラム教徒ではないが、アフリカ大陸からリビアに移動し、そこからヨーロッパに渡ってくる非合法移民者が、イスラム過激派の支援を受けて影響され、イスラム過激テロ集団に加わっていく、危険性も無視できない。ヨーロッパにあるイスラム団体は、生活困窮者の支援活動を、何処でも展開しているのだ。その中から、イスラム教に改宗する者も、出て来よう。
ヨーロッパにあるイスラム団体は、サウジアラビアなど湾岸諸国からの、政府レベルの寄付に加え、篤志家個人からの寄付も少なくないし、既に、長期ヨーロッパに居住している者の中からは、実業家が多数誕生しており、彼ら自身の間からも、資金が集まるようになっているのだ。
ヨーロッパ諸国は、こうしたヨーロッパ在住のムスリムを敵視し、警戒し、対応していくのか、あるいは何らかの融和策を採っていくのかを、真剣に考えなければならない時期に、来ているということだろう。