トルコがやっと重い腰を持ち上げて、ISに対する戦争を開始したかのイメージで、世界は捉えているようだ。あるいは西側の各国にとっては、そう認識した方が、都合がいいのかもしれない。
トルコから7月27日に帰国したが、イスタンブールの街中で気になったのは、シリア難民の数が増えているという印象だった。6~7歳位の女の子が、車の波を縫うようにして、小銭を貰おうとしていた。
母親や父親と思われる大人たちは、路肩に座り込んで、子供たちの稼ぎを待っている、という風だった。車の通りだけに危険であろうし、暑さもひとしきりだったので、子供たちが倒れたり、車にはねられないかが気になった。
先日も、レストランでシリア難民の子供が、ちり紙を売ろうとして、店の中を歩き回っていたところ、店員に殴られ店から放り出された、というニュースが伝えられた。
むごいように思えるだろうが、トルコ人側もシリア難民の対応には、苦慮している。汗とホコリで薄汚れた体臭のする子が、レストランの中を歩き回り、客にちり紙やガムなどを、売りつけようとされるのは、極めて迷惑であろう。
それはまだいいとして、執拗に金をせびり付きまとう子供や、盗みや引ったくりをする、子供もいるのだから、トルコ人にしてみれば、大迷惑ということになる。特に観光地では、シリア難民の対応に、困り果てているようだ。
そうしたシリア人に、うんざりするトルコ国民が多い中で、今回のトルコ軍によるシリアに対する、軍事攻撃が始まったわけだが、トルコ国民のなかには何処かこの戦争を、歓迎する雰囲気があるかもしれない。あるいは戦争という一大事を、軽視する傾向があるのかもしれない。
トルコで会った友人が語ったところによれば、いまのトルコ人にとっての、最大関心事は戦争ではなく、インフレ、トルコリラの下落、経済の悪化などだという話だ。従って、エルドアン大統領に対する非難の声も、あまり多く聞かれない、というのが庶民の実感だ、ということだった。
トルコ軍は今回の戦争で、ISとクルドのPKK(クルド労働党ゲリラ組織)を、攻撃すると語っているが、ほとんどの攻撃はPKKに対してのものであり、シリア北部のクルド人に対するものではないか。従って、ISに対する攻撃は、形式的なものであり、本格的なものではなさそうだ。
トルコが今回の作戦を始めた真の理由は、クルドがシリア国内で自治区を形成することを、阻止するためであり、将来的なクルド国家の樹立に繋がる、芽を潰すことにあるのだ。そのためには世界が敵視する『ISに対する戦争』は、格好の口実となろう