トルコの南東部の街スルジュで、7月20日大爆発が起こり、31人が死亡し、100人以上が、重軽傷を負っている。この出来事は即座に、IS(ISIL)による特攻テロと断定された。その判断は正解であろう。
このスルジュの街は、シリア北部のコバネに近い街で、住民の大半がクルド人と思われる。今回のテロは社会青年協会(SGDF)のメンバーが、スルジュの街のアマラ・センターで集会していたものを、狙った犯行と思われる。
約300人の18歳から25歳のメンバーが、ここで集会をしていたのは、シリアのコバネの街の再建を、手伝うためであった。会員はトルコのクルド人やトルコ人であり、クルドに対するシンパシーを、強く抱いている人たちだ。
今回のテロ事件については、世界中から非難の言葉と、トルコに対する哀悼のメッセージが、送られているが、この事件が起こった原因については、「トルコ国民を分裂させるためだ。」という判断が出ている。
当然のことながら、PKK(クルド労働党)はトルコ政府の、治安不備について抗議している。また、イスタンブールで起こったデモでは、与党AKPとエルドアン大統領に対する、IS(ISIL)は殺人集団だ!エルドアンは協力者だ!という非難が叫ばれている。警察は催涙弾や放水車で、デモを潰そうとしている。
実行犯がIS(ISIL)であることは間違いなかろうが、なぜこの時期に、IS(ISIL)がこのような大規模なテロを、トルコ国内で起こす必要が、あったのであろうか。IS(ISIL)はコバネへの攻撃でトルコ領土から作戦を展開していた、という噂も流れている。
IS(ISIL)に参加する外国人戦闘員のほとんどが、トルコ領土を通過して、シリアやイラクに入っている。しかも、武器弾薬や医療品までもが、トルコから秘密裏に送られているのだ。つまり、トルコ政府(エルドアン大統領)とIS(ISIL)との関係は、極めて緊密なのだ。そのことを、オバマ大統領は露骨に非難してさえいるのだ。
そうした事情を考え合わせると、今回のテロはトルコ国内のしかるべき勢力が、トルコのクルド人に対して、攻撃を仕掛けることを、IS(ISIL)に依頼したのではないのか。そして、そのことはトルコ国内と国民に対して、トルコが異常事態であることを、強く印象付けるためではなかったのか。
この先予測されることは、極めて厳しい治安対策という名の、国民対する締め付けが始まろうし、そうした中では連立内閣構想も、それが失敗した場合の選挙も、実施されないかもしれない。つまりトルコは戒厳令に近いような、状態に置かれる可能性が高いということだ。
そのことで、誰が一番喜ぶのかを考えてみれば、今回のテロが起こった、真の理由がわかろう。またそのツケは、やがて大きな報復をその人物に対して、確実にもたらすことになろう。