IS(ISIL)のシナイ半島への進出やムスリム同胞団の抵抗、イスラム原理主義者による、観光スポットへのテロ事件など、種々の国内問題で、盛り上がりに欠ける、エジプトの状況だが、ここにきて景気のいい話が、2件出てきた。もし、この二つの話が実際に動き出せば、エジプトの未来は明るくなろう。
ひとつは、ヘンケル社がエジプトに 3930万ドルを投資し、ポートサイドにある工場に加え、カイロとアレキサンドリアの中間に位置する、オクトーバー6シテイに新工場を設立することが、正式に合意されたのだ。
このヘンケル社は薬品や家庭内必需品など、多くの種類の製品を製造しており、エジプトに工場が増設されることにより、エジプト人雇用が拡大することに繋がる。それはエジプトにとって、極めて重要なことだ。
加えて、ヘンケル社にしてみれば、アフリカ大陸の北端に位置し、中東地域やユーラシアなどとも、経済関係を持つエジプトに、工場を設立することは、同社の製品の販路を、広げることに繋がる。
エジプトはアフリカ諸国間で、結成されている経済組織の、COMISA,SADEC,東アフリカ・グループの重要なメンバー国であり、加えて、ユーラシア経済共同体のメンバーでもある、この組織には述べるまでもなく、ロシアやカザフスタン、アルメニア、キルギスタンも加盟している。
また、南アメリカのメルコス-ルとの関係もあり、エジプトはブラジルなどの市場に直結している。このことは、エジプトが世界の15億人を、顧客に出来る状況に、あるということだ。そのことがヘンケル社をして、エジプトへの本格的な乗り入れを、決定させたのであろう。
もうひとつの景気のいい話は、エジプト国内で今年に入り、会社設立を希望する企業が増えており、現段階で1722社が申請を出している。これらの会社の総資本額は、269億エジプト・ポンド(1ドル=7・6エジプト・ポンド、35億ドル)に達している。この額は前年度に比べ、147パーセントの伸びだということだ。
シーシ大統領は国内のテロ問題と、ムスリム同胞団の敵対を前に、エジプト経済の改善で、エジプイト国民を自分の側に引き込み、支持を増やし、エジプト国内を安定させていけるのか、あるいはその反対になるのか、実力を試される時期に、入ったということであろう。