『株を上げるクルド下げるトルコ』

2015年6月29日

 

 アメリカ政府がシリア北部での、クルドの戦いぶりを称賛している。アメリカの本意はどうであれ、クルドがコバネでの戦いで、大きな犠牲を払いながらも、IS(ISIL)を撃退することに成功を収めたからだ。

 これでクルドのミリシアは、ほぼトルコとの国境地帯を、制圧することができたようだが、それはエルドアン大統領にとっては、大きな不安なのであろう。何度も『トルコは北シリアにクルドの国家が設立されることを認めない。』と怒鳴りまくっている。

 加えて、トルコ軍に対しシリア領内に進攻し、クルドやIS(ISIL)を打倒しろ、と命令した。これに対し、軍は口頭ではなく、書面で命令を出せと返答し、加えて、そうした軍事行動は、政府が政治的、外交的努力をした後の、話だと返答している。

 つまり、トルコ軍はエルドアン大統領の命令を、拒否したということだ。もし、今の段階で軽々にトルコ軍が、シリア領内に進攻すれば、相当の犠牲が出ることが、予測されるからであろう。トルコ軍は40キロの射程を持つミサイルや、長距離砲が既に国境に設置されているのだから、トルコ側が攻撃を受ける心配はないとしている。

 トルコ軍のこうした立場に対し、野党CHPHDPも賛同している。また元国連大使だった人物も、トルコ軍がシリア領内に侵入することは、国際問題になる、と警告している。

 他方、アメリカ政府はトルコが、IS(ISIL)への参加を希望する外国人戦闘員の、移動を黙認していることや、物資の輸送についてクレームをつけている。どうやらトルコが今、本格的にアメリカの非難の的に、なり始めてきている、ということではないのか。

 エルドアン大統領は国内での、AKPに対する支持を増やすために、トルコ軍をシリアに侵攻させ、 シリアとの緊張を作り出したい考えのようだが、そのことは国内外から、痛烈な非難を、受けり危険性がある、ということではないのか。