『トルコがヌスラにアルカーイダと関係断て』

2015年6月24日

 

 トルコがシリアで戦闘を展開している、イスラム原理組織ヌスラに対して、アルカーイダとの関係を断つよう、働きかけている。それは何を意図しているのか、またそのトルコの働きかけに対して、ヌスラ側はどう考えているのかが興味深い。

 このことが、トルコの考えているように推移すれば、シリアでの戦闘に大きな変化が生まれる、可能性があるからだ。ヌスラはシリアでの戦闘で、IS(ISIL)と協力関係にはないが、アサド体制にとっては、敵対関係にある。

 トルコが考えているのは、ヌスラをアルカーイダから切り離すことによって、国際的なイスラム原理テロ組織ではない、ということにして、今後、武器や戦闘員のシリア入りに、便宜を図るということであろう。

 そのことにより、トルコとヌスラとの信頼関係が醸成されれば、次の段階では、トルコがシリアの反政府組織FSA(自由シリア軍)と、ヌスラを協調させ、アサド体制を打倒する、ということであろう。

 では、ヌスラ側はどうであろうか。ヌスラの幹部の間では、意見が割れているようだ。ヌスラはアルカーイダとの関係を、既に断ったという情報も流れているが、それはヌスラ全体ではない。現在ヌスラのトップとされている、アブ・ムハンマド・ジョウラーニはアルカーイダとの関係を絶ったというが、他方、ヌスラの大幹部であるマクデイシーや、アルカターダは意見を異にしている。

 アルカターダはヌスラがアルカーイダとの関係を断つことは、何も得にならないと語っている。マクデイシーはザワーヒリには何の影響もないだろうが、ジョウラーニには影響があろうと語っている。

 ヌスラがアルカーイダから抜けることは、国際的なイスラム原理主義闘争の中で、IS(ISIL)の立場を強化するからだ。そしてイスラム原理の闘争への、戦闘員の参加と援助金は、IS(ISIL)にほとんどが流れる可能性があろう。

ただ、マクデイシーやアルカターダは第一線から離脱し、ヨルダンのザルカ市やアンマン市に居住している。そのとこは、二人のヌスラ内部や、イスラム原理闘争各派への影響力が、あまり無くなっている、ということかもしれない。

 トルコはこの工作を、成功させることができるのか、もし成功すれば、シリア国内では完全に、IS(ISL)が孤立することになるし、アサド体制もFSAとヌスラが大同団結すれば、相当厳しい状況に、追い込まれることになるだろう。

 エルドアン大統領にしてみれば、一日でも早くシリアのアサド体制を打倒し、シリアとの通商関係を、回復したいということではないのか。トルコの経済は悪化の一途をたどっており、そのことが、エルドアン体制への不満を、爆発させえる危険があろう。