『ドルーズ自治区はなぜイスラエルに必要か』

2015年6月19日

 

 最近になって、アラブ紙などに、何度となくドルーズに関する記事が、掲載されるようになってきている。それは何故なのか、という疑問がわいてくるが、ドルーズ問題とイスラエルの安全問題を、一緒に考えると、その理由が見えてくるようだ。

 ドルーズ教徒が主に生息しているのは、シリアのゴラン高原周辺ということになる。ドルーズ教徒の中には、現在、イスラエルの国籍を取得し、イスラエル国民として、生活している者も少なくない。

 もちろん、イスラエルの中のドルーズ教徒と、シリアやレバノンのドルーズ教徒の間には、交流があるし、国籍を異にし、国境を挟んで、結婚する場合もあるのだ。彼らにはイスラエル政府から、ある種の特権的なものが、与えられている。

 シリアでも同様であり、ドルーズ教徒はマイノリテイであることから、それなりの待遇を受けてきているのだ。しかし、今回のシリア内戦は、ドルーズ教徒に限らず、全てのシリア国民に、大きな犠牲を払わせている。

 そうした状況下で次のようなことが起こっている。

1:シリアの難民がイスラエルに入り込んでくる可能性。

2:シリアの戦闘がイスラエルにまで拡大してくる可能性。

3:シリアのISやヌスラなどが、イスラエルに攻撃してくる可能性。

 1:については、多数のシリアの難民が、トルコやイラク、ヨルダンに、流れ込んでいるが、イスラエルも最近になって、一部シリア難民受け入れを、口にし始めている。それは国際社会の一員として、そうせざるを得なくなってきたからであろう。

 しかし、大量のシリア難民がイスラエルに入ってきて、そのまま住み続けることになれば、完全にイスラエル人口構成図は、書き換えられてしまおう。そこで、ゴラン高原周辺にドルーズ自治区を創り、そこにシリア難民を収容する、という方法が考えられているのであろう。

 2:については、既にゴラン高原のそばで、ヌスラとIS(ISIL)が戦闘を展開したり、これらの集団がシリア軍と戦火を交えている。その結果、流れ弾がイスラエル領土内に、着弾するという事態も、発生している。

 3:については、IS(ISIL)はそもそも、いろんな目的を持った戦闘員の、集団であることから、その戦闘目的は各種多岐にわたろう。シリアやイラクを占領支配することだけが目的の者や、殺戮、麻薬、女、金と多種あるだろうが、なかには、真剣にジハードを考えている者もおり、彼らのうちの一部は、最終的にエルサレムの解放に向かう、可能性があろう。

 これ以外にも、ドルーズ問題が今持ち出されてきている理由が、まだ沢山あろう。しかし、イスラエルにとってはこれだけでも、ドルーズの自治区を創り、そこをバッファー・ゾーンにして自国を守るということが、重要であることがわかろう。