トルコの政党は、上位から順番に紹介すると、与党AKP、次いで野党第一党のCHP,その次が野党のMHPと並んでいる。そして、その後にはクルドの政党HDP がいる。それ以外にも政党は多数あるが、あまり大きな役割を、担うことはない。 今回の選挙で目立ったことは、野党第二党のMHPの躍進であろう。MHPは前回の2011年の選挙では、53議席を獲得していたが、今回の選挙では83 議席に増加しているのだ。そして獲得した票も、全体の16・5パーセントに達している。 何故こうもMHP が支持を、増やしたのであろうか。そこにはトルコ社会の特徴が、表れている。トルコの場合は保守的な考えを、持っている国民が多く、イスラム教についても、敬虔な信者が多いのだ。 野党第一党のCHPは、世俗主義の政党であり、都市部の住民を除くと、こうした保守的な考えを持った、地方の人たちには、CHP は支持され難いということがある。だからと言って地方の住民が、与党AKPの汚職や大統領の権限拡大を、許すかというとそうでもない。AKP が強い地方でも、今回の選挙では相当支持者を、減らしたようだ。 それでは、AKPを支持しなくなった保守派の人たちの票は、どの党に向かったのかというと、ほとんどがMHPに向かったようだ。MHP は愛国的な国民運動党、というのが日本語訳の政党名であり、その名が示すように、愛国的であり、民族的な特徴を持っている。 地方の保守的な人たちは、世俗的な政党であるCHPを、支持できないことから、ほとんどの票が、MHPに向かったのだ。しかし、そこにはAKP の汚職や大統領制への移行に、反対の考えがあり、MHPは支持者のそうした意向を、汲まないわけにはいくまい。 選挙後、AKPはMHPと連立内閣を組むだろう、という予測が広がっていたが、どうもそう簡単ではなさそうだ。MHPの幹部がAKP との連立の、可能性について問われたのに対して、『MHPはAKPが徹底的に汚職を取調べ、追求するならば連立を組んでもいい。』と言ったのだ。 これでは、エルドアン大統領は、MHP との連立を、組むことは不可能になろう。徹底的な汚職の追及には、エルドアン大統領も容疑者として、リスト・アップされているし、彼の子息や妻も、汚職の嫌疑を受けているからだ。 もし、MHPがこの立場を堅持するのであれば、あるいは野党3党が、連立内閣を構成する、可能性も出て来よう。その場合、CHPとMHP,そしてHDP が、何処まで政治家としての、妥協ができるか、ということであろう。 |
『MHPは今回の選挙でなぜ勝利出来たのか』
2015年6月10日