ロシアの治安議会副議長のエルゲニー・ルキヤノフ氏は、シリアのアサド体制がIS(ISIL)によって打倒されれば、次の攻撃対象となるのは、サウジアラビアだと語った。彼はそればかりか、サウジアラビアだけではなく、すべてのアラブ湾岸諸国も、攻撃の対象になると分析している。
彼の分析によれば、現在IS(ISIL)の戦闘員として参加している、サウジアラビア人の数は5000人にのぼり、彼らはシリアが陥落した場合、どこに行くのかということだ。サウジアラビア人のIS(ISIL)戦闘員は、母国であるサウジアラビアに向かう、ということになるというのだ。そして彼らにできることは、ただサウジアラビア国民を、殺害することだけだ、と語っている。
IS(ISIL)は既に、サウジアラビアを攻撃対象にしていることを明言しているし、今年に入って、サウジアラビアのシーア派地区アルカテイーフでは、二つのシーア派モスクが爆破されてもいる。当然のことながら結果的には、多くのシーア派サジアラビア人が、死傷しているのだ。
問題は、このIS(ISIL)の攻撃で、サウジアラビア政府がIS(ISIL)を、支援していることだ、とエルゲニー・ルキヤノフ氏は語っている。サウジアラビア政府は出来るだけ多くの、シーア派国民を殺害したい、と考えており、その目的のためにIS(ISIL)を支援し、使っているのだというのだ。
皮肉なことに、サウジアラビア政府が進めようとしている、IS(ISIL)を使って進めようとしている、シーア派国民殺戮は、サウジアラビアの政府の宗派である、ワハビー派にきわめて近い考えを持っているという点だ。このことは、実はサウド王家と、ワハビー派集団との間に、問題が生じ始めていることの、証なのかもしれない。
最近では、サウド王家が、ほとんどの権利を独占した形になり、本来であれば、ワハビー派集団が託されたはずの、宗教的指導権もサウド王家に、奪われつつあるのだ。ワハビー派発祥の地区の観光都市化計画は、ワハビー派の多くの幹部にとって、極めて不愉快なことではないのか。
エルゲニー・ルキヤノフ氏はその点については、触れていないようだが、当然のこととして、サウド王家とワハビー派集団との間に生じ始めている、軋轢に気が付いているはずだ。権力の独占と愚かな判断は、結果的にその体制を、窮地に追いやるということではないのか。