ペルシャとアラブの文化が生み出した、シリアの砂漠にあるキャラバン・ルートのオアシス、パルミラは世界遺産に登録されている、貴重な文化遺産の遺跡だ。切石を積み上げて建てられた多くの門や建物が、2000年の歴史を通じて今に残ってきた。
このパルミラはローマ帝国と、インドやペルシャ、そして中国との交易のセンターになっていた。パルミラは砂漠のなかのオアシスの街だった。長い砂漠超えの旅をしてきたキャラバン隊のメンバーは、パルミラに入り安堵したことであろう。
そのためパルミラは『砂漠の花嫁』と呼ばれ称えられていた。レバノンが生んだ著名な歌手フェイルーズも、このパルミラを称える歌を歌っている。それだけアラブ人を始め、世界の人たちから、愛されていたのだ。
過去四年間のシリアの内戦で、このパルミラの建物は破壊され、貴重な歴史的遺品は盗み去られた。それは世界の人々にとって、大きな損失であることは間違いない。
パルミラに通じるタドモルの街は、IS(ISIL)の侵攻により破壊され、占領されるに至っている。それはこうした地方の町は、シリア軍が守りきれないでいるために、あっさりIS(ISIL)の手に落ちてしまうのであろう。
パルミラは歴史的に貴重なだけでは無く、その近くに石油があり、シリアの電力センターでもあることから、シリアにとって重要な場所だ。しかも、パルミラを支配すれば、シリアの首都ダマスカスはすぐそこにあるし、ホムスにも通じている、戦略拠点なのだ。
IS(ISIL)がパルミラに近づいて、この遺跡を破壊することになれば、多くの人が嘆き悲しむであろう。IS(ISIL)は既に歴史遺産を破壊してみせている。アッシリアの街ニムルドは破壊され、モースルの歴史博物館は破壊され、内部に展示されていた多くの彫像は打ち砕かれ、こなごなにされてしまった。
世界はアッシリアの遺跡が破壊されるのを、何の手立てもせずに、ただ嘆き傍観していた。今回もパルミラの遺跡破壊を、世界は傍観し、ただ嘆くだけなのであろうか。
もしそうだとすれば、世界の歴史遺産に対する評価は、無いに等しいのではないか。歴史遺産を守るために、世界中の国々が特別の軍を、結成してもいいのではないのか。
そして、IS(ISIL)が歴史博物館から盗んだ遺品を、闇のルートが取引するようなことに対しては、厳罰で対応すべきではないのか。これらの盗品は欧米各国の金持ちや、著名な博物館に納まっているのが実情だ。