『アサドは砂漠に咲いた花か』

2015年5月14日

 

 BBCが流した記事によれば最近、シリアのアサド大統領は相当弱気になっているようだ。彼はそうしたなかで、最近『一つのゲームに敗れたからといって、戦争そのもので敗北したわけではない。』と語っている。

 しかし、イドリブやジュスル・シュグールでの敗北は、明らかにアサド側にとって、極めて不利なものとなっているようだ。こうした拠点を失うことによって、アサド側の敗北はシリア各地に、みられるようになった、ということのようだ。

 なかでも、イドリブの敗北はアサド大統領の出身地である、ラタキアにつながるルートなのだ。このラタキアの街はアラウ派の、主要な居住地になっている。述べるまでもなくアサド大統領はイスラム教のシーア派のなかの、アラウイ派のヌサイリ派なのだ。

 アサド大統領にとってもう一つの痛手は、彼の右腕とも呼べる2人の軍事政治責任者を、失ったことだ。一人はガザ―リー氏であり、もう一人はマムルーク将軍だ。ガザ―リー氏は先月病院で死亡しており、マムルーク将軍も活動不能な状態になっている、と伝えられている。

 シリアのアサド体制に対しては、トルコ、サウジアラビア、カタールなどが敵対し、反政府側を支援している。それはスンニー対シーアの争いも反映している。スンニー派を代表するサウジアラビアは、シーア派の代表である、イランの中東各国への影響拡大を、嫌悪しているのだ。

 しかし、だからと言ってアサド体制が、今日明日に打倒されるということは、考えられないのではないか。それは、シリアのアサド体制をイランとロシアが、支援しているからだ。ロシアは武器を供与し、イランはアサド体制に軍事支援と、資金的支援を行っているからだ。

 問題はそのアサド体制支援国である、イランが現在アメリカとの核交渉中であり、選択肢を限られている、ということだ。アサド体制を本格的に支援することになれば、当然それはアメリカとの交渉に、悪い影響を及ぼす、危険性があろう。

 ただ、アメリカとしても、突然アサド体制が崩壊し、その後を過激なイスラム組織が支配するようなことは、望んでいない。したがって、その調整がつくまでには、まだ時間があるということだ。一説によると、イランは軍事指導者もシリアに、派遣しているそうだ

 そこで出てきている予測は、シリアを5分割するという考えだ。その考えによれば、シリアは政府の軍が支配する地域、穏健派シリア軍組織(反シリア体制派)、ヌスラ組織、クルド組織、そしてIS(ISIL)の支配だというのだ。

 もしシリアの内情が、そのように推移するのであれば、アサド大統領は何らかの安全地帯を、確保する必要があろう。それはシリア内部なのか、外国なのかは分からない。