リビアのシンニ―氏を首班とする、リビア正統政府の軍が、トルコの貨物船に対して攻撃を加えた。トルコの貨物船はリビア沖、10マイルの距離に、停泊していたようだ。
リビア正統政府側は、トルコの貨物船に対して、リビアのデルナに接近しないように、何度も警告を発していたと主張している。問題はこのデルナという街がどのような街なのかということにあり、しかも、トルコの貨物船が何を運んでいたのか、という点にある。
デルナはファジュル・リビアなど、反政正統府側のイスラム原理主義の、集う場所であり、リビア正統政府側との間で、激しい戦闘を繰り返してきている。そのデルナのファジュル・リビア側に、トルコの貨物船は武器弾薬を、運んでいるのではないか、と疑われていたのであろう。
トルコはリビアの第二政府と呼ばれている、トリポリを拠点とするアンサール・シャリーア・イスラム組織などに対して、これまでも武器を供給してきていた。そのため、リビア正統政府はトルコに対し、何度も抗議していたのだ。
今回のリビア正統政府による攻撃で、トルコ人船員が一人死亡した、と伝えられているが、このことに対して、今後どのような反応を、トルコ政府は示すのであろうか。
6月7日にトルコは選挙を控えており、あらゆる出来事が、選挙と関連して対応される、雰囲気のなかにある。そうなると、エルドアン大統領は今回の事件を、放置するわけにはいくまい。
トルコはスレイマン・シャー廟の安全を考え、国際法違反の行動を越し、スレイマン・シャー廟を移設しているし、その新設のスレイマン・シャー廟を、ダウトール首相はつい最近訪問している。これも国際法違反であることは、諸外国が認めている。
選挙を控え愛国心を煽り、国民の支持を得ようとする、トルコの与党AKPは、リビア正統政府に対し、過剰な反応を示すかもしれない。たとえば、リビア正統政府の本拠地である、トブルク市に対して、空爆を試みるかもしれない。
そんなことになれば、欧米諸国は放置しないのではないか。リビアが産油国であり、良質の石油を産出することから、欧米諸国、なかでもアメリカとフランスは、一日でも早いリビア石油の、市場復帰を望んでいるからだ。
『目には目を歯には歯を』のイスラム世界にあって、エルドアン大統領はまさにそれを選択する、可能性があるということではないのか。つまり、トルコ船員の血を、リビア人の血で贖わせるのではないか、ということだ。