『だんだん出てきたバルザーニの本音』

2015年5月 8日

 

 イラク北部はだいぶ前から、クルド人の自治区になっている。このため、イラク全土が荒廃混乱するなかで、イラクのクルド地区は例外的な発展を、遂げてきている。街は静かであり、平和であり、モダンな建物や、住宅群、ショッピング・センター、ホテルが立ち並んでいる。

 これらのクルド地区の開発には、トルコの企業が大挙して乗り出し、実現したものであり、トルコとクルド自治政府との関係は、極めて深い。一説によれば、クルド自治政府のバルザーニ大統領は、持てる財産のほとんどを、トルコに投資しているということだ。

 昨年起こった、シリア北部の街コバネでの戦いでは、IS(ISIL)と対峙するシリアのクルド人を支援するために、クルド自治政府は自軍ペシュメルガを派兵し、勝利を収めている。そのことは、シリアとイラクのクルド人に大きな自信を、与えたことであろう。

 この勝利の美酒が冷めやらない前に、バルザーニは次のステップについて、語り始めている。彼は『もし』ではなく『何時』クルド国家が出来るのかということだと語っている。つまり、バルザーニ大統領の頭のなかでは、すでにクルド国家がイラクから分離独立する構想は、出来上がっているということだ。

 述べるまでもなく、イラクのクルド地区は大産油地区であり、クルド地区がイラクから分離独立しても、十分に成り立つ資金的裏付けがあるのだ。彼と取り巻きの間には、緩やかなイラクとの連邦案もあるようだ。

 しかし、クルド自治政府は独立を急いではいないとバルザーニ大統領は語っている。クルド地区の人たちが何を望んでいるのか、十分話し合ってから、イラクと平和的な交渉をして、最終的な結論を出したいとしている。

 同時に、バルザーニ大統領はトルコが抱えるクルド問題の解決に、これまで協力してきたし、今後も協力する意思があると語っている。彼に言わせれば、平和的な話し合いによる問題の解決が、一番だということのようだ。

バルザーニ大統領の立場は極めて柔軟だ、ということが言えそうだ。それは彼の父の代から繰り返されてきた、イラク政府との戦いが悲惨なものであったことによろう。トルコを自国発展の最大の協力者とし、イラク中央政府とも話し合いで、有利な地位を獲得していきたいということであろう。