もう2年も前の話になるが、国連会議の後で、ダウトール首相(当時外相)がペンシルバニアアに居住している、ギュレン氏を訪問した。明確な日程は定かでは無いが、この年の12月に拡大した、政府要人の賄賂スキャンダル事件の、前であったことは確かであろう。
なぜならば、後にダウトール首相は、帰国をギュレン氏に勧めたが、拒否されたのは、彼がイランのホメイニ師のような、帰国をしたかったからであろう、と語っているからだ。
しかし、ギュレン氏の性格を、ある程度知っている私に言わせれば、このダウトール首相の判断は、全く違っている。ギュレン氏はそのようなパフォーマンスや、派手な行動を嫌う人物だからだ。
問題はこのダウトールし首相の、ギュレン訪問が何のために、行われたのかということだ。多分に、ダウトール首相は当時のトルコの社会情勢を、性格に把握しており、近い時期に賄賂をめぐる問題が拡大し、社会不安に陥ることを、恐れていたからではないか。
そのため、ダウトール首相は安全弁として、ギュレン氏に会っておきたい、と考えたのであろう。しかし、あまりギュレン氏からは、まともに相手にされなかったのではないか。トルコ問題については語らず、シリア問題だけの意見交換に終わった、と伝えられているからだ。
問題はこのギュレン訪問が、当時、国連に参加していたギュル大統領に、ダウトール首相は行く前にも、行った後も報告している、と語っていることだ。つまり、ギュレン訪問はギュル大統領の許可の下に、行われたと言いたいのであろう。
しかし、ギュル大統領は事前には、何の連絡も無く、事後、帰国して1週間が過ぎてから、報告を受けただけだ、と語っている。つまり、ダウトール首相のギュレン訪問は、大統領の許可の下に、行われたのではないということだ。
2013年の当時の状況からすれば、エルドアン首相(当時)の許可も、ギュル大統領の許可も無く、ダウトール外相がギュレン氏という、政敵に会いに行くということは、裏切りでしかあるまい。そのことがいま、問題になっているのだ。
では何故この時期かということになるが、多分にギュル大統領もダウトール首相も、次の選挙に向けた動きなのであろう。当然のことながら、今回のギュレン訪問の件は、エルドアン大統領のダウトール首相に対する信頼を、大きく損なわせることになろう。