2011年の革命とカダフィ殺害以降、民主化するはずのリビアは、部族や派閥間の戦闘が、4年近く続いていた。リビア政党政府は首都トリポリから、東部のトブルクに移動し、トリポリを制圧したイスラム派は第二政府を設立して、対抗していた。
それ以外にも、ミスラタ・グループやズインタン・グループ、カダフィ支持グループなどが乱立状態にあった。それが戦闘を展開しているのだからさしもの産油国リビアも、石油の生産や移送、そして積み出しに混乱が生じ、国庫は空っぽに近い状態になってしまった。
そうした大混乱のリビアに、イラクやシリアで派手な戦闘を展開し、広大な地域を支配している、IS(ISIL)の一部が侵入してきた。もちろん、リビア国内にもIS(ISIL)のメンバーがいた。
IS(ISIL)はリビアに入り、まもなくエジプト人コプト教徒21人を処刑して、恐怖の支配を広げようとした。しかし、それはリビアの場合は、逆効果だったようだ。
IS(ISIL)がリビアに入る以前の段階では、IS(ISIL)にバイア(忠誠を誓う宣誓)をしていた、幾つかの組織が逆にIS(ISIL)に対して、敵対し始めたのだ。例えば有力な組織では、ファジュル・リビアがある。この組織は今では、IS(ISIL)とシルテで、戦闘状態に入っている。
つまり、リビア人にしてみれば、よそ者が勝手に入ってきて、乱暴狼藉を働くことは許せない、ということであろうか。あるいは、自分の国がこれ以上ぼろぼろになることを、止めなければならない、と真剣に考えた結果であろうか。
いずれにしろ、そのIS(ISIL)に対する敵対的感情は、リビアの今後にとって、大きなプラス要因となりそうだ。これまで強硬だったイスラム組織が、選挙をして民主的な政府を作ろう、と言い出しているのだ。
加えて、ハフタルにもう少し権限を与えた方がいい、という意見も出てきている。述べるまでも無く、ハフタルはリビア正統政府のなかで、軍事のトップに位置している人物だ。
今後の様子を、もう少し見なければ、何とも言えないが、IS(ISIL)が侵入してきたために、リビア各派の和解が、成立するかもしれない。その原因はやはり『よそ者にリビアの石油収入を、渡すわけには行かない。』ということではないのか。
リビアがIS(ISIL)の侵入を理由に、結束できるとすれば、それは人口が多くない、ということにもよるのかもしれない。もう少し様子を見てみよう。