『イスタンブールのグランド・バザール一部閉鎖』

2015年4月23日

 

 選挙が近づいているというのに,トルコ政府は何を考えたのであろうか。イスタンブールの観光のセンターであるグランド・バザールの一部を閉鎖すると発表し、すでにその地域の商店主に立ち退きを命じたのだ。

 その地域の名は、サンダルベデステイニ地区であり、グランド・バザールの中では、2番目に古い地区だということだ。管理側とすれば、建物が老朽化して危険である、という理由も成り立つだろうが、どうも真相はそうではないようだ。

 グランド・バザールを管理しているのは、VGM(基金財団)という組織であり、述べるまでもなく、政府直轄の組織であろう。この組織がすでに家賃の100パーセント値上げもした、と商店主の一人は不満を述べている。

 この地区では、トルコ人や外国人観光客が、繊維製品、衣類を主に買うところで、繊維商店が中心ということであろう。確かに、繊維製品は昔からトルコの主要産業であり、テーブル・クロスやベッド・カバーから始まり、スカーフやショールなどは、外国人観光客も土産に買って帰るのだ。

 何故こんなことが始まったのであろうか。実はイランのビジネスマンである、レザ・ザッレブがこの地区を買い上げ、大型ショピング・モールを建設する計画を、持っているということだ。イスタンブールの、しかも観光の中心であるグランド・バザールに、巨大なショッピング・モールが誕生すれば、大きな売り上げと利益が期待できよう。

しかし、そうなるとグランド・バザールの持つ、エキゾチックな雰囲気は無くなり、外国人観光客を嘆かせることに、なるのではないか。また、土地の人たちも、気軽さや気安さを、感じられなくなるだろう。

 このレザ・ザッレブなる人物の希望が、何故こうも簡単に叶うのか、ということになると、実は、トルコ政府の要人が絡んだ汚職事件で、賄賂を渡した側の人物が彼なのだ。しかも、エルドアン大統領の意向で、彼にはトルコのパスポートも、支給されている。

 トルコ政府とエルドアン大統領は、昨年火を噴いた汚職事件に懲りることなく、これからもレザ・ザッレブと、おいしいビジネスを続ける、ということであろうか。しかし、そのことが今後、エルドアン大統領に大きなマイナスを、生み出すことは必定ではないのか。

 野党側にしてみれば、トルコの国内外で知らない人がいない、グランド・バザールをめぐり、汚職グループが弱小の商店主たちを苦しめる、立ち退きを実行したということは、格好の非難攻撃材料になるからだ。

 金と権力が結び付くと、人には正常な判断力を破壊する、麻薬のような効果が、あるのであろうか。エルドアン大統領は1か月近くに、迫った選挙を前に、火中に飛び込むという、大曲芸をやって見せるようだ。