『大丈夫かサウジアラビアのイエメン介入』

2015年4月11日

 

 現在イエメンでは、イエメン政府とホウシ派との間で、内戦が続いており、イエメン政府は窮地に追い込まれている。そこで、サウジアラビアがイエメンの内紛に、本格的に介入することになった。

 サウジアラビアはイエメン内紛への介入前に、支援国を集め連合組織を結成した。モロッコ、ヨルダン、サウジアラビア、エジプト、パキスタンが、それらのメンバー国ということになっている。

 これらの国の中で、実戦能力の高い国は、エジプトとパキスタンであろう。それ以外の国の参加は、政治的かつ外交的な意味合いのものであり、形式的なものということになろう。戦闘能力を期待されたためではなかろうと思われる。

 エジプトは海軍を動かし、イエメン海域に迫っているし、最近になってエジプトのシーシ大統領は、陸軍の派兵も考えていると語った。パキスタンも同様に、今後の成り行き次第では、陸軍を参戦させる可能性がある。

 すでに何度か書いてきたが、イエメン内紛の裏には、イランの思惑があり、それにサウジアラビアが対向している、という構図ではないのか。イランが支援しているホウシ派が、イエメンを完全掌握するようなことになれば、イランはペルシャ湾の出口のホルムズ海峡と、紅海の出口のバーブルマンデブ海峡を、支配下に置くことになり、そうなれば、アラビア半島の国々は、石油の輸出を含む、すべての外部との交流のドアを、閉められてしまうということだ。

 また、サウジアラビアにしてみれば、イエメンがホウシ派によって制圧されることになれば、これまで存在していた、イラン、イラク、シリアに加え、もう一つの仮想敵国が、登場することにもなるのだ。

 したがって、サウジアラビアが真剣に取り組む気持ちはわかる。だが、イエメンに対して、空軍による空爆だけではなく、陸軍を投入するということは、明確な勝利を収めない限り、軍隊を撤収することが、出来なくなるということでもある。

 このことから、アメリカの軍事専門家は『イエメン内戦へのサウジアラビアによる軍事介入は、サウジアラビアにとっての、ベトナム戦争だ。』と表現している。そこで頼みの綱は、連合を組んだ国々が、どこまで陸上戦闘に参加してくれるか、ということになろう。

 すでに述べたように、期待できる戦闘能力を持った国はエジプトであり、パキスタンだが、パキスタンに対してはすでに、イランがザリーフ外相を派遣している。つまり、イエメン戦争に軍隊を派遣するな、という警告を発するための訪問であろう。

 パキスタン側も早い段階から、陸軍の派遣はリスクが大きいとして、首相が『現段階での派兵は次期総尚早。』という判断を明らかにしている。

 それではエジプトはどうであろうか。エジプトは述べるまでもなく、アラブ諸国内にあって、最大の軍事力を有する国であり、実戦経験もある。また、エジプトは60年代に、イエメン派兵の経験もある。

 エジプトはいま、国内的にイスラム原理主義者を始めとする、反体制勢力を抱えており、自国の問題で忙しいということになる。そうしたなかで、エジプトがイエメンイ軍を派兵するとなれば、それ相応の見返りを期待するだろう。エジプトの経済状態はまさに瀕死の重傷にあるのだから。

 そうであるとすれば、エジプトはサウジアラビアの陸軍派兵要請に対して、どれだけの対価を支払う用意があるのか、ということを言い出すだろう。もし、それに対して、サウジアラビアが渋るようであれば、エジプトは全く陸軍を送らないか、ほんの形式的な小規模の部隊しか、送らないということであろう。

 サウジアラビアは単独でも、イエメンのホウシ派と戦う覚悟が、出来ているのかということだ。それ無しに軽々に軍隊を派兵すれば、とんでもない火傷尾を負うことになろう。また、戦死者が多数出た場合には、国民の反政府感情が、拡大していく危険もあろう。

 サウジアラビアは大きな敵を意識して、小さな敵に手を出したが、それが国内問題に火をつけかねない、危険なものになる可能性がある。もちろん、イエメン内紛への介入そのものも、危険極まりないのだが。