いまヨーロッパ各地でユダヤ人に対する、攻撃が始まり拡大している。攻撃と表現したのは、その言葉のままの攻撃が行われているからだ。
ポーランドではユダヤ人の墓が荒らされ、墓碑にはハーゲン・クロイツのマークが、落書きされている。
オランダではサッカー・フアンがナチ式の、右手を挙げる挨拶のポーズを取る者が、出現している。そればかりか彼らは、『ユダヤ人はガス室に行け。』と叫んでいるのだ。
ボスニアでもユダヤ人を殺せと叫ぶ者が多数出てきている。
イギリスでも反ユダヤ会議に、ユダヤ人のリーダーは会議に抗議して、参加することをボイコットした。
アメリカのデンバーではユダヤ・センターに、白い粉が送り届けられ、ユダヤ人が緊急避難してもいる。
こうした一連のユダヤ人に対する敵対行動は、何故この時期に各国で、表面化してきたのであろうか。
考えられる理由は幾つかある、第一に、世界の景気が悪化しているため、失業者や生活苦に陥っている者が、増えているためであろう。過去の例に見られるように、こうした社会問題は、常に弱者を生け贄にしてきているのだ。
経済が悪化し、庶民の生活が苦しくなってくると、『ユダヤ人だけが得をしている』という被害妄想が広がり、ユダヤ人に対する反発が、生まれるのだ。
第二の理由は、イスラエルが国際問題で、強硬な政策を取っていることに対する、反発からではないか。アメリカがイランとの間でこぎつけた、核問題の処理に関する基本合意に対し、イスラエルのネタニヤフ首相は、頑強に抗議し反発しており、場合によっては、イランの核施設に対する攻撃も、辞さないということを語っている。
第三には、イスラエルのパレスチナ問題に対する、強硬な対応にあろう。ヨーロッパで不安を増すユダヤ人に対し、ネタニヤフ首相はシャルリー・エブド事件後、『ヨーロッパのユダヤ人はイスラエルに移住して来い。』と呼びかけた。その後、イスラエルではヨルダン川西岸地区での、入植が拡大しているのだ。
こうした問題が重なり、ユダヤ人に対する憎悪が、異常な広がりを見せているのであろう。皮肉なことに、敵対するユダヤ人とムスリムとが、いま、ヨーロッパでは同じ嫌悪される側に、立たされているのだ。
エジプトが建設する巨大都市新カイロには、700万人のユダヤ人が、移住してくる、という噂も流れている。歴史は繰り返されるのであろうか。