今年の6月7日には、トルコで統一選挙が実施される。国会議員が新たに選出されることになる。この選挙がいま内外から注目されているのは、選挙で与党AKPが勝利した場合、エルドアン大統領は国民の支持があったとし、議院内閣制から大統領制に変更すると宣言しているからだ。
この目的のため、これまでも幾つもの犯罪行為すれすれのことを、エルドアン大統領は繰り返してきている。しかも、彼には大汚職疑惑があり、それを裁判官、検察官、警官を首にしたり、左遷してごまかしてきているのだ。
こうなると、与党議員の間からも、エルドアン大統領に対する非難の声が上がり始め、大統領職を離れたあと、冷遇されていたギュル前大統領、内閣会議をエレドアン大統領に牛耳られ、首相としての権限を否定されたダウトール首相、AKP結党時の立役者であるアルンチ副首相らが、押しなべてエルドアン大統領に、反旗を翻し始めている。
その選挙前の天王山といえるのが、4月7日の各党立候補者のリスト発表だ。エルドアン大統領は自分の取り巻きたちを、立候補者リストに並べ、与党の候補者として発表する予定だが、これに対しダウトール首相は、立候補者の選別権は内閣総理大臣である自分にある、と言い始めている。
つまり、エルドアン大統領の言うままになっていたダウトール首相が、ここに来て明確に反旗を翻したのだ。そうなると否応なしに、エルドアン大統領とダウトール首相は、正面衝突することになる。
つい数ヶ月前、フェダン・ハカン情報長官が辞任し、国会議員に立候補したいとダウトール首相に申し出たとき、ダウトール首相はそれを受け入れたのだが、エルドアン大統領が無理やり情報長官職に復帰させた、といういきさつがあり、ダウトール首相もフェダン・ハカン情報長官も、強い不満を抱いていた。
加えて、ギュル前大統領は新党を結成するだろうといわれているのだ。彼は大統領職から離れ、与党からは遠ざけられていたわけだから、新党を結成しても文句を言われる筋合いは無い。しかも、彼の支持者は少なく無いし、外国でもすこぶる評判がいいのだ。
さてエルドアン大統領は6月7日の選挙に向け、投票者たちに生活必需品をばら撒いたり、仕事を請け負わせたりして、票を獲得しようと工作している。そして、なんとしても400議席を確保して大統領制に変えたいと思っている。
しかし、今回のギュル前大統領、ダウトール首相、アルンチ副首相の言動を見ていると与党は分裂し、選挙結果は惨憺たるものになるのではないか。その後、エルドアン大統領を待ち受けているのは汚職裁判であり、家族が一斉に刑務所送りになる可能性があるということだ。