いまのイエメンのような状態を、混沌というのだろう。幾つものグループが武力を持ち、それぞれに支配地域を、広げようとしている。
大きなグループとしては、ホウシ・グループがあり、イエメン政府があるが、それに加えイエメンのアルカーイダ組織、アンサール組織なども跋扈している。
アンサール・グループはタイズ市の南西部を抑えているようだし、ホウシ・グループは首都サナアを、完全に制圧している。
イエメン政府にとって、最も強敵であり頭痛の種は、ホウシ・グループとの関係だ。ホウシ・グループはサアダ市も制圧したが、この街はサウジアラビアとの国境に接していることもあり、サウジアラビア政府にとっては、大きな不安となっていよう。
ホウシ・グループはここで、ロケット弾やその他の武器を使い、派手に軍事訓練を行っているのだ。しかし、ホウシ・グループは特定の国を意図しての、訓練では無いと語っている。
このため、サウジアラビア国防相は同国南部に、軍事基地を構築することを決めその建設を急いでいる。そして、この場所には軍事訓練場も設置されている。述べるまでもなく、イエメン政府軍を訓練する、ということであろう。
そもそも、ホウシ・グループが軍事訓練を、サウジアラビアとの国境で始めたのは、サウジアラビア政府が主導する、イエメン和平会議の発表があったからだ、ということらしい。もちろん、この会議にホウシ・グループは、出る意思は無いということだ。
さて、サウジアラビア軍がいきり立つ気持ちはわかるが、どこまでイエメンと戦えるのか。イエメン人が痩身で身が軽く、戦闘を長期にわたって続けてきている。いわば戦闘のベテランなのだ。
それに比べ、サウジアラビアの軍人は、本格戦闘の経験は皆無であろう。
アメリカの特殊部隊が、イエメンから全面撤退したのは、述べるまでもなく危険が、極めて高くなったからだ。そのアメリカ軍のいないイエメンで、サウジアラビア軍は何が出來るというのだろうか。
サウジアラビア軍の軽率な行動は、イエメンではなく、逆にサウジアラビア本体を、危険にさらすことになりかねない。