『エルドアン・ブリュッセル訪問は空振りに終わるか』

2015年3月18日

 

 6月の選挙をひかえ、トルコのエルドアン大統領は、ブリュッセルを訪問する、計画を立てている。しかし、現段階でのEU側からの反応は、すこぶる悪いようだ。

 EU側ではエルドアン嫌いが広がっており、折に触れてEP(ヨーロッパ議会)のメンバーなどが、エルドアン大統領を批判している。サマニヨル・テレビに対する圧力を始めとする、報道の自由への圧力、民主主義から権威主義への移行と、大統領制の導入計画、ツイッターやフェイスブックに対する規制強化などが非難の理由だ。

 こうしたことから、エルドアン大統領がブリュッセルを訪問するための準備が、EU側ではほとんど行われていないようだ。もちろん、そのための要人との会談なども、セットされていないということだ。

 実は1月に、ダウトール首相がヨーロッパを訪問した折に、エルドアン大統領領の訪問が話し合われ、その時点では、それなりの対応が語られていたということなのだが、最近になって、エルドアン大統領に対するEU諸国の見方が、厳しくなっているということであろう。

 もし、ヨーロッパ側からそのような冷たい対応を受ければ、エルドアン大統領はそれが選挙に大きく響く可能性があることから、激怒し何をしでかすかわからない。その場合にはダウトール首相の更迭もあり得よう。

 しかし、ヨーロッパ諸国側は本音とは裏腹に、エルドアン大統領を歓迎するかもしれない。

 それは、ロシアがトルコ経由でガスを輸出することを決定したことにある。もし、トルコがその気になれば、ヨーロッパに送られるロシアのガスは、トルイコで止められてしまう可能性があるのだ。つまり、ロシアのガスがトルコ経由になることによって、トルコはヨーロッパ諸国に対する、生殺与奪の権利を手にするということだ。

 加えて、トルコが現在抱え込んでいる、大量のシリア難民に対する対応を変えた場合、ヨーロッパ諸国はシリア難民の大量流入を、阻止できなくなるだろう。こうしたことを考えると、ヨーロッパ諸国は、慇懃無礼にでも、エルドアン大統領を歓迎せざるを、得ないのかもしれない。