大分前から、トルコのエルドアン大統領とアメリカのオバマ大統領との関係は、冷え切っていたようだ。以前、国連総会があった時、エルドアン大統領は国内に向けて、オバマ大統領と45分間話し合ったと言ったが、それは嘘で総会の会場で、オバマ大統領が彼の肩をたたき、元気かと言っただけだというのが、真相のようだ。
その後、エルドアン大統領がホワイト・ハウスに電話しても、オバマ大統領は多忙を理由に、全く電話に出なくなった、と伝えられている。
その後、アメリカとトルコとの関係の改善は、全く見られなかったが、ここにきてアメリカ政府は、エルドアン大統領を逆なでするようなことを、幾つか発表している。
第一は、アサド大統領体制を残すことを考え、同大統領と話し合う方向を示したことだ。エルドアン大統領はこれまで、何としてもアサド体制を打倒する、と息巻いていたし、そのためにIS(ISIL)との連携もしてきていたのだから、アメリカの新しい立場は真逆であろう。
第二は、アメリカがエルドアン体制について、厳しいコメントをするようになってきていることだ。アメリカのシンクタンク(BPC)はエルドアン大統領がトルコの民主主義を破壊する、というレポートをしているし、政府高官からも同様の内容の、コメントが出ているのだ。
第三には、エルドアン大統領が蛇蝎のように嫌い、潰そうと思っているギュレン氏をリーダーとするヒズメト組織が、クルド問題に対する対応で、問題の解決に向かって活動している、と称賛したことだ。
一体これは何なのかということを考えると、時期が時期だけに6月の選挙に向けた、エルドアン大統領側に対する、ネネガティブ・キャンペーンではないかと思われる。
アメリカがここまでエルドアン体制に対抗するのは、エルドアン大統領がトルコのインジルリク空軍基地をアメリカの要請にもかかわらず、IS(ISI L)攻撃に使わせないでいることや、アメリカが要請したにもかかわらず、トルコ軍がIS(ISIL)攻撃に、動かなかったことなどによろう。
エルドアン大統領は6月の選挙で、400議席以上を獲得し、トルコを議院内閣制から、大統領制に変えると豪語しているが、選挙予測では彼が獲得できるのは、267議席ではないかとみられている。
加えて、ギュル元大統領に対する冷たい仕打ちは、同氏と同じように冷たい仕打ちを受けた、ダウトール首相が連携し、エルドアン大統領に対抗する動きになってきている。つまり与党AKPに亀裂が、生まれているということだ。
6月の選挙におけるエルドアン大統領の敗北は、同大統領の犯罪に対する取り調べも進むことになるであろうから、エルドアン大統領のその後は、AKサライという世界最大の大統領公邸から、刑務所へ転がり落ちる運命に、あるということも言えよう。