トルコのエルドアン大統領が、彼一流のハッタリ演説を行った。この演説がトルコの南東部の街、デヤルバクル市で行われたのだから、ある意味ではエルドアン大統領はいい度胸をしている、という評価も出よう。
なぜならば、デヤルバクル市のほとんど住民はクルド人であり、何かにつけて政府に抵抗するストや、デモが行われる場所だからだ。
エルドアン大統領は『トルコにはクルド問題は存在しない。』というのだが、現実には国内で政府に対する抗議デモが頻発しているし、政府そのものがクルド側の組織と交渉しているのだから、問題が無いというのは、奇妙な話だということになろう。
しかし、エルドアン大統領は『トルコではクルド系の人物が大統領になっている。』『トルコではクルド系の大臣が何人も出ている。』『トルコでは高級官僚にクルド人が就任している。』『トルコでは軍の高官にクルド人がなっている。』 それでどうして差別があると言えるのか、ということのようだ。
確かにトルコではこれまで、首相から大統領に就任した、オザル氏がクルド系であることは、内外でよく知られている。つまり、エルドアン大統領はトルコ人とクルド人は平等なのだ、ということを言いたいようだ。
加えて、クルド人が抱える問題はトルコ人も抱えているし、それ以外のマケドニア人、ボスニア人、ラズ人、ロマ人も同じだ、と語っている。
このエルドアン大統領の発言に対して、クルド人からは『全くナンセンスな話だ、矛盾だらけだ。』という非難の声が上がっている。またトルコの右翼政党からも『問題がないのなら、政府はなぜクルドとテーブルを囲んで、交渉をいているのか、アブドッラ―・オジャランはクルドのPKK議長だが、彼はクルド人ではなく、アルメニア人だと言いたいのか。』と手厳しい非難の言葉を寄せている。
AKPが与党になって以来、トルコ政府はクルド人に対する諸権利を認めてきている、クルド語放送、クルド歌謡の公開の場での披露などは、すでに認められているし、トルコ国営テレビもクルド語放送をしている。
しかし、クルド側の女性代表ともいえる、デヤルバクル市長のギュルタン・クシャナク女史は『クルド人には母語での教育が認められていない。』と反論している。
何故エルドアン大統領はこの時期に、不必要な発言をしたのであろうか。それは述べるまでもなく6月の選挙向けのものであろう。