トルコの陰の実力者であるフェダン・ハカン氏が、情報長官の職を辞したのは、つい最近の話だ。彼は辞任の理由を『疲れた』と語った。しかし、その裏には、エルドアン大統領とダウトール首相との間の、権力闘争がちらついている。
フェダン・ハカン氏が情報長官の職を辞して、国会議員に立候補すると言い出した時、ダウトール首相はこれを支持したが、エルドアン大統領はやめて欲しくない、と再三語っていた。
トルコの権力闘争で、トルコのすべての秘密情報を牛耳る、フェダン・ハカン氏を抱き込んだ方が、優位に立つことは見え透いている。ダウトール首相はそれを狙ったのであろう、と言われている。
野党側は今回のドタバタ劇について『政党に属す者が情報長官の地位につくのは公平でない』と非難している(フェダン・ハカン氏は与党AKPに加盟し、立候補することになっていた)。また『見っとも無い』『恥だ』といった非難の言葉が、野党のCHPやMHPから出ている。
エルドアン大統領は6月の選挙で勝利し、トルコを議院内閣制から、大統領制の国家にしようと考えているが、その場合、フェダン・ハカン氏の協力が、どうしても必要だ、ということであろう。
今回のフェダン・ハカン氏の情報長官辞任と、その後に続く議員立候補意向、そして情報長官への復帰劇は、エルドアン大統領とダウトール首相との関係を、完全に壊すのではないか。
また、ギュル元大統領の立候補についても、ダウトール首相は支持したが、ここにきてエルドアン大統領も、支持に回っている。当初は、エルドアン大統領はギュル氏を与党から外し、政治の世界から完全に、葬り去ろうとしていたのだ。ここにきて、立場が急変したのは、一人でも味方を増やそうという、エルドアン大統領の策謀によるのではないか。
いずれにしろ、6月の選挙を前に、トルコの国内政治闘争は、激しさを増していきそうだ。