3月6日の金曜日、二つの事件がエルサレム市で発生した。ひとつは車によるテロであり、もう一つはユダヤ人墓地に対する、破壊行為だった。
東西エルサレムの境界付近では、昨年も車によるテロ事件が発生したが、今年もほぼ同じ場所で、事件が起こった。ユダヤ人の休日の、プリムの祭りでにぎわうこの地域で、パレスチナ人のムハンマド・サライメという名の男が、車を警官の集団に向けて暴走させ、怪我を負わせたというものだった。
幸い負傷した警官たちは皆、軽傷で済んだようだが、ショックは大きかったものと思われる。警察はこれはテロ事件だ、と非難したことからそれが伺える。
東エルサレムについて、イスラエル政府は西エルサレムと切り離せない、イスラエルの首都だと主張しているが、パレスチナ側は東エルサレムを将来の独立したパレスチナ国家の、首都だと主張している。この地域は1967年の第三次中東戦争以来、イスラエル側が占領し支配している。
同じ日に、パレスチナ人居住区に隣接する、ユダヤ人墓地が荒されるという事件が起こっている。オリーブ山のユダヤ人墓地の墓石が、複数倒されたというものだ。同じようにヨーロッパでも、ユダヤ人墓地荒しが起こり、多くの墓石が倒され、あるいは墓石に、ナチのハーゲン・クロイツが書かれていた。
パレスチナ自治政府はイスラエルの、パレスチナに対する強硬な対応と、ヨルダン川西岸地区への不法な入植が続いていることから、イスラエル政府との治安協力を止めると言い出している。そうしたなかで、今回の事件が起きていることは見逃せまい。つまり、事件の裏にはパレスチナ自治政府の意向が、あったとも考えられるからだ。
先にイスラエルのネタニヤフ首相はアメリカを訪問し、アメリカのイランの核問題に対する柔軟な対応を、激しく非難してきている。ネタニヤフ首相はアメリカがやらないのであれば、単独でもイランに対する対応『攻撃』を行う意思がある、とも語っている。その結果、イスラエル国内ではネタニヤフ首相が所属する、リクード党に対する支持が、微増している。
3月の後半にイスラエルのクネセト『議会』選挙が、実施されることになっていることから、ネタニヤフ首相の訪米と強硬発言は、それに向けたプロパガンダだ、と評する人士もいる。
ネタニヤフ首相はソロモンの神殿を再建することを、夢見ていると言われるが、その場合にはイスラム教の聖地、エルサレムのイスラム側の建物が、破壊されることが前提であろう。そのため、イスラエルのヨルダン川西岸地区での、入植地の増加にあわせ、パレスチナ人の間では、イスラエルに対する怒りが高まっているのだ。