イエメンのシーア派ホウシ組織と、スンニー派のハーデイ政府との戦闘は、結果的にホウシ組織の勝利に終わった。その結果、イエメンの首都サナアはホウシ派の支配下に、置かれることになった。
早速、ホウシ組織は自分たちの立場を強化するために、イランとの関係強化に動いた。そして早速、イランはこれに応えサナアの空港に、イラン機を乗り入れている。
他方、ハーデイ政府はホウシ組織の動きを、クーデターと非難し、現在アデンに拠点を移した。アデンにも国際空港があり、ハーデイ側が国際的に動こうとすれば、出来ないことはない。
加えて、アデンを抑えているということは、バーブ・ル・マンデブ海峡の出口を抑えることにもつながり、まだ勝負が決まったわけではなさそうだ。もちろん、イラン政府はそのことを十分承知しており、今後どのような助言をホウシ組織側にするのか興味深い。
以前にも書いたが、もし、イランの強い影響を受けるホウシ組織がバーブ・ル・マンデブ海峡を支配するようなことになれば、イランはホルムズ海峡と合わせ、アラビア半島の海運を全面的に支配することになる。
その結果は、アラビア半島の湾岸諸国だけではなく、イラクや欧米の船舶も影響を受けるということだ。つい最近、エジプトがトルコとの通商上の、特別合意の期限が切れたとして、延長を行わない方針だが、そのことは、トルコと湾岸諸国との貿易に、少なからぬ影響を与えることになるということだ。
そのことは、トルコとエジプトだけの問題だが、バーブ・ル・マンデブ海峡とホルムズ海峡が、イランによって支配されれば、その無言の圧力は、欧米諸国全てに及ぶということだ。
イランがイエメンのサナアまでの空路を、確保したということは、アラブ首長国連邦、オマーンなどの空域をどうするか、という問題も出てこよう。もちろん、アラビア海やインド洋上空は、誰にも邪魔されずに、通過できるが。
最近になって、イランは強気の立場を崩さず、堅持の構えのようだ。それは、アメリカが核交渉で、妥協の気配を見せ始めたことも、影響しているのであろう。そうなると、中東地域の陰の主役は、イランということになるのではないのか。
エジプトやトルコ、サウジアラビアが、これまで中東を代表する国のように言われてきていたが、ここにきて、各国はそれぞれに難問を抱え始めており、他の国の面倒まで見ている余裕は無い、ということではないのか。