『予想外だったISのリビアでの行動』

2015年3月19日

 

リビアから意外なニュースが、伝ってきている。それのよると、ISISIL)がリビアのシルテ(トリポリとベンガジの中間に位置する街)で、トリポリ政府側のミリシアと戦闘になり、ミリシアのメンバーを殺害したということだ。

 本来であれば、トリポリ政府(第二政府と呼ばれイスラム原理主義の組織)の側に立って、ISISIL)は戦闘を展開するはずなのだ。なぜならば、トリポリ政府と対抗している、トブルク拠点を置く国際的に認知された政府は、世俗的な政府といわれているからだ。

 したがって、私の予測によればISISIL)はリビアに入り、トリポリ政府側と連携して戦うのではないか、というものだったからだ。しかし、現実は全くその逆になったわけだ。

 何故ISISIL)はトリポリ政府側のミリシアと、シルテで戦ったのかということを考えてみると、二つ理由が思い浮かぶ。一つはアメリカが結論を急ぎ、アメリカが送り込んだハフタル参謀長と連携して、イスラム原理主義組織(トリポリ政府)を早急に処理したい、と考えたからではないかということだ。

 もう一つ考えられる理由は、今回の戦闘が起こったシルテからは、リビア最大の石油積み出し港が近い、ということによるのではないかということだ。ラースラヌーフやシデル港は、リビアの主要石油積み出し港なのだ。

 つまり、ISISIL)は主義主張よりも、彼らの資金源を確保することを、最優先したということだ。もし、このラースラヌーフ港と、シデル港を確保できれば、彼らはリビアの石油代金を、せしめることが出来ることになろう。

 しかし、そう簡単に事は運ぶだろうか。そうなれば世界の国々は、リビアの石油を買わなくなるだろう。もちろん密輸で取引し、一部の国や企業は買うかもしれないが、それは結局その国にとっても企業にとっても、手痛い国際的な制裁が、待ち受けているかもしれない。

 今回のリビアにおけるIS(ISIL)の戦いは、IS(ISIL)が実はイスラム原理主義などとは全く関係ない、現実のなかで活動をしていることを、暴露することになったのではないのか。

 IS(ISIL)は所詮は寄せ集めの集団であり、多くのメンバーはイスラム教とは関係のない、ヨーロッパ人だということを忘れてはなるまい。彼らの目的は金であり殺戮であり、女であり、麻薬なのだ。IS(ISIL)組織のメンバーで敬虔なイスラム教徒たちは、単なる戦闘員に過ぎず,作戦決定には何の関わり合いも、持てない人たちなのだ、というのが現実のようだ。