『CIAはアサド体制を残したい』

2015年3月15日

 

 今頃になって、アメリカが中東でやってきたことの意味が、ぼやけてきたのかもしれない。あるいは当初の目的を、ほぼ達成したからなのかもしれない。いずれにしろアメリカはここにきて、大きく変更することを決めたようだ。

 その最大の変更は、シリアに対する対応だ。アメリカのCIAはいまになって、シリアのバッシャール・アサド体制を残すほうが、得策だと言い始めている。

そうアメリカが考え始めたのは、もし、バッシャール・アサド体制を打倒した場合、その後にどのような体制が、誕生するかを考えた結果だ。もしかすれば、シリアでもリビアのような混乱状態が、当分の間続くかもしれないし、あるいはIS(ISIL)のような、強硬なイスラム原理主義の体制が、誕生するかもしれないと思うように、なってきているということだ。

そこでアメリカが言い訳しているのは、だからアメリカは穏健なバッシャール・アサド体制に対抗する組織を、支援しているのだということになる。しかし、その反体制派は政治局も軍事局も完全に堕落してしまっており、これからねじを巻いても使い物にはなるまい。

政治局のメンバーは、トルコのイスタンブールやアンカラで、美酒美食を楽しみ、優雅に暮らしているし、軍事局のメンバーも同様だ、既に戦闘を本気でやるとは思えない堕落振りなのだ。

そこでアメリカが言い始めているのは、政治的交渉による解決だ。もちろん、この政治交渉のなかにはIS(ISIL)や、ヌスラといった組織は参加出来ない。つまり、いまのシリアで、最も強硬で危険な組織を外して、政治交渉するということだが、それが妥協を生んだとしても、あまり有効には、働かないのではないのか。

ここに来てアメリカは、ロシアもアメリカも地域の各国も、シリアの政府が崩壊することは、望んでいないと言い始めた。しかし、アメリカはつい最近まで、バッシャール・アサド体制を打倒すると言って、いきまいていたのではなかったのか。

加えてアメリカはイラクにおける、IS(ISIL)との戦いで、イランの協力が必要だ、と語るようになってきているのだ。『イラクはイランと協力しあい、我々アメリカはイラクと協力し合っている。』と間接的なイランとの協力を、認める発言をしている。

いずれにしろ、アメリカが始めたアラブ諸国に対する破壊工作は、終わりの時期を向かえそうだ。それは歓迎すべきことだ。ただし、その裏にはアメリカの当初の目的が、ほぼ達成していることも、見逃すわけには行くまい。