クルド人の人口は3000万人とも4000万人とも言われながら、いまだに国家を持つことはなかった(1940年代にほんの短期間クルド国家が出来たことはあった)。そのクルド人が最近の中東地域の激動のなかで、ある種の自信を持ち始めているようだ
その自信はシリア北部の街コバネ(アイヌルアラブ)での、IS(ISIL)との戦いで勝利を得たことであろう。それまでアラブの政府軍はIS(ISIL)との戦闘で、勝利できないでいたのだから、自信を持って当然であろう。
コバネでの戦闘にはイラクのクルド自治区が派遣した、ペシュメルガ軍が参戦した。そしてIS(ISIL)は敗北し、コバネから退くことになった。
このコバネでの勝利をベースに、シリアのクルド人とイラクのクルド人の間では、緩やかな連携のクルド連邦を結成しようという、動きが出てきている。
このことを一番懸念していたのはトルコだった。このクルド連邦構想がもっと進んでいけば、トルコのクルド人も連邦に参加したい意向を、世界に向けて発信し始めるであろう。
それはトルコのクルド分離独立運動のボスである、アブドッラ―・オジャラン議長を刑務所から出して、交渉しなければならなくなる可能性が出てこよう。今年のノールーズ(3月のイスラムの春祭り)には彼を出獄させろという要求が、トルコ国内のクルド人からすでに出ているのだ。
クルド大連邦構想にはシリアとイラク、そしてトルコの一部が組み込まれるということであろう。ラフではあるが、すでにその地図が登場しているのだ。
このクルド側の動きに対して、トルコやイラク、シリアはどう対応していくのであろうか。すでにトルコのエルドアン政権はクルドに対し、大幅な妥協をしているという話もある。
しかし、それは選挙対策であったり、一時しのぎではないのか。なぜならば、クルド人が主に居住するトルコの南東部は、地下資源が豊富な地域だ、といわれているからだ。
イラクもそう簡単には将来クルド国家の設立につながる動きを容認すまい。イラクの大産油地帯はクルド人が居住する、北部がメインだからだ。それはシリアも同様で、シリアでは北部のクルド人居住地域が、石油を産出する地域だからだ。
つまりクルド連邦共和国の誕生は、そう容易ではなく多くの敵と戦ってしか、勝ち取れないということであろう