『ハーシム・クルチュ最高裁裁判長の辞任』

2015年2月11日

 

 トルコのハーシム・クルチュ最高裁裁判長が辞任した。これは明らかなエルドアン大統領に対する、抗議の行動であろう。彼の任期はまだ313日まで、残っていたのだ。

 ハーシム・クルチュ債裁判長は辞任にあたり『裁判が報復の道具に使われてはならない。』と語っている。つまり、エルドアン大統領が政敵だと解釈している、ギュレン氏と彼の組織に対して、裁判所を通して圧力をかけていることを、指しているのだ。

 ハーシム・クルチュ裁判長はそのことに加え、『もはや個人は法によって守られているとは、思えなくなった。』とも語った。

 彼の後任にはアルスラン氏が就任するが、憲法裁判所『AYM』の選挙で17人のうちの11人の委員の支持を得て、就任することになった。このアルスラン氏は与党AKPと、深い関係にある人物だ。彼は与党AKPのギュル元大統領によって、2012年に法曹界の重鎮の地位に、推薦されている。

 そこで問題になり始めているのは、ハーシム・クルチュ氏がこれまで公正な裁判をし、権力者に対してしても、直言して来ていたことから、彼の国民の間での人気は抜群な点だ。

 彼の辞任後に噂され始めたのは、ハーシム・クルチュ氏が今度の地方選挙で、国会議員に立候補するのではないかということだ。もしそうなれば、ハーシム・クルチュ氏は、ほぼ確実に当選するだろう。

 それどころか、大統領選挙に立候補した場合には、どうなるのであろうか。ハーシム・クルチュ氏の知名度は抜群であり、清廉な人物であるという評価が高いこととあいまって、大統領選挙でエルドアン氏と競った場合、勝つ可能性も否定できまい。

 大統領選挙に立候補しなくとも、もし国会議員に当選すれば、最高裁裁判長時代に知りえた、多くの議員や閣僚のスキャンダルにつついて、間接的に発言していくかもしれない。

 今回のヒシャ-ム・クルチュ氏の最高裁裁判長辞任は、任期満了の前でであっただけに、今後当分の間、多くの憶測を呼ぶであろう。そしてそのことは、エルドアン大統領の心胆を、冷やすことになろう。

 エルドアン大統領があせり、もしヒシャーム・クルチュ氏に対し、強硬な手法を用いるようなことがあれば、それは彼の政治生命を、かえって短くすることになろう。