最近、トルコのエルドアン大統領は『私が国家であり、私がスルタンだ。』と宣言した。その前には、オスマン帝国時代に同帝国が支配していた、各地方の軍人の服装をさせて、AKサライ(大統領公邸)の階段に並ばせ、そこを悠然と下ってきて、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長に、会見を許すというシーンが、世界のマスコミを通じて広く報じられた。
最近のエルドアン大統領の最大の関心事は、6月に予定されている選挙で、高い得票率を獲得し、彼の考えている『トルコを内閣制から大統領制に変更する、国民の支持を獲得する。』ことにあるようだ。
そうなればトルコは完全に、エルドアン大統領の独占的支配下に入る、ということであろう。憲法の改正も政治も軍事も経済も、すべての権限が彼の手に、握られることになるのだ。
そのことに加え、エルドアン大統領は自分の子息を、次の選挙に立候補させる方針のようだ。これまで汚職事件で、エルドアン大統領と隠蔽工作に動いた、ビラール氏、娘のスメイヤ女史がその人たちだ。
エルドアン大統領に言わせれば、ダウトール首相では心もとないので、こうした家族を国会議員にし、影響力を拡大し、次いで彼の後継者にしよう、ということであろう。
これではトルコが17,8世紀ごろのオスマン帝国に、逆戻りするということではないのか。中央アジアや北朝鮮を見れば、大統領が自分の子息を、後継者にしている例はあるが、決して民主的な方法とは言えまい。
ビラール氏に関して言えば、彼は汚職の容疑者として、一度は逮捕され尋問も受けており、検察や警察には、彼の罪状に関する膨大な調書と、証拠書類があるようだ。
ビラール氏を国会議員にしたい、とエルドアン大統領が考えているのは、汚職捜査がぶり返された場合、ビラール氏が再度取り調べを受けるであろう。そうなれば父親との関連も、明らかになってしまう。
そうした事態に至らないように、エルドアン大統領はビラール氏を、国会議員にして、不逮捕特権を盾に、取り調べをさせない、ということであろうか。
問題がその程度であればまだかわいいのだが、エルドアン大統領は彼のオスマン帝国を設立し、その帝国のスルタンを、彼の家族で世襲にするということでは、国民の賛同は得られまい。エルドアン大統領はそれすらも、力任せに実行しようというのだろうか。