総人口が3500万人とも、4500万人とも言われているクルド民族は、国家を持たない世界最大の民族、と長い間言われ続けてきた。実はクルド民族が国家を設立したことは、第二次世界大戦の後まもなくにあったのだが、結果的にこのクルド国家は、短命に終わっている。
そしていま、クルド民族はトルコを始め、イラクやシリアそして、一部中央アジアとイランにも居住している。彼らは二等国民として、いまだに生活しているのだ。
このため1980年には、トルコのクルド人たちが、トルコからの分離独立闘争を始めた。クルド労働党(PKK)がその組織であり、議長にはアブドッラ―・オジャラン氏が就任している。
以来、トルコ政府の発表によれば、30年にも及ぶ闘争のなかで、4万人のトルコ人がPKKの攻撃により、犠牲になっているということであり、トルコ政府としては、何としても打ち負かしたい相手であろう。
アブドッラ―・オジャラン議長は、現在イスタンブールに近い、マルマラ海の小島の一つ、イムラル島の刑務所に収監されているが、現在ではクルド各党の幹部たちと、面会が可能な状態にある。
それはトルコ政府がエルドアン首相の時代になり、話し合いによるクルド問題の解決を望んだからだ。以来、トルコでは国営放送をクルド語で流したり、クルド語の詩や歌が、自由に発表できるようになったり、クルド語での教育が可能になっている。
しかし、クルド側はトルコからの分離を望んでおり、最初の段階では自治権を獲得したい、と望んでいる。そのことからトルコ側からはハカン・フェダン情報長官が、複雑なクルド側との交渉の代表となり、何度もアブドッラ―・オジャラン議長と、交渉を重ねてきた。
そして、最終的に秘密の合意が交わされ、今年4月15日にクルド地区(トルコの南東部地域)の自治権が、認められることになった。それに先立って、トルコ議会は2月15日までに、クルド人に自治を認める法案を、可決する予定になっている。
問題はこのクルド人に自治を認める法案が、成立するのかということだ。現段階では、与党AKPが多数を占めており、エルドアン大統領の強引な手法をもってすれば、可決される見通しが高い。
もし、このクルドとの秘密合意が、議会を通過しなければ、PKK側は再度テロ作戦に戻るだろう。そうなるとIS(ISIL)の問題や、トルコ国民の反エルドアン大統領の動きと合わせ、トルコ国内は極めて危険な状態に、なるのではないかと懸念される。